「噛めない子」が増えている? ― 現代の子どもに起こる咀嚼発達異常
はじめに
「最近の子どもはよく噛まない」「すぐ飲み込んでしまう」――
そう感じたことはありませんか?
近年、子どもの“噛む力(咀嚼機能)”の低下が問題視されています。
食生活の変化や生活環境の影響によって、咀嚼筋や顎の発達が不十分なまま成長し、「噛めない子」「噛まない子」が増えているのです。
本コラムでは、現代の子どもに見られる咀嚼発達異常の背景と、歯科から見た改善のヒントについて解説します。
咀嚼発達とは ― 噛む力は自然に育つもの?
子どもは生まれたときから噛む力を持っているわけではありません。
乳歯が生え始め、離乳食を通じて「飲み込む」「噛む」動作を経験しながら、徐々に口の筋肉や顎の発達が進んでいきます。
咀嚼の発達は大きく分けて次のステップで進みます。
1.ごっくん期(生後5〜6か月):舌を使って食べ物を喉へ送る
2.もぐもぐ期(7〜8か月):舌を上下に動かし、歯ぐきでつぶす
3.かみかみ期(9〜11か月):上下の顎を動かして噛む動作が始まる
4.完了期(1歳半〜3歳):奥歯を使ってしっかり噛み、咀嚼機能が発達
この一連の流れの中で、舌・頬・唇の筋肉が協調して働くようになります。
現代の子どもに多い「咀嚼発達異常」
本来なら自然に発達するはずの咀嚼機能。
しかし、近年では「うまく噛めない」「噛む回数が極端に少ない」など、発達の遅れが目立つ子どもが増えています。
よく見られる症状や特徴
•食べ物をすぐ飲み込む
•硬いものを嫌がる
•片側だけで噛む(偏咀嚼)
•食事に時間がかかる、もしくは極端に早い
•顎が小さく、前歯が出ている
•発音が不明瞭
これらは単なる「食べ方の癖」ではなく、口腔機能の発達不全が背景にある場合も少なくありません。
なぜ「噛めない子」が増えているのか?
1.食生活の変化
やわらかい食事、加工食品、ファストフードの普及により、顎を使う機会が減少しています。
昔と比べると、噛む回数はおよそ半分以下に減っているとも言われています。
2.姿勢や体幹の弱さ
姿勢が悪いと顎の動きが制限され、うまく噛むことができません。
体幹の筋肉が弱い子どもは、噛む力も弱くなる傾向があります。
3.鼻づまりや口呼吸
鼻呼吸ができないと、口が常に開いた状態(口唇閉鎖不全)になります。
その結果、舌が下がり、正しい咀嚼運動ができなくなります。
4.乳幼児期の離乳食の与え方
離乳食を「のどごし重視」で早く終わらせてしまうと、噛む経験が不足します。
本来は段階的に「噛む練習」を積むことが重要です。
咀嚼の発達が遅れるとどうなる?
噛む力が育たないと、単に食事の問題にとどまりません。
● 歯列・顎の発育への影響
•顎の成長が不十分で、歯が並びきらない
•開咬(前歯が閉じない)や出っ歯のリスク上昇
•舌の位置が低くなり、口呼吸の癖が固定化
● 消化・栄養吸収への影響
よく噛まないことで食べ物が細かくならず、消化器への負担が増えます。
また、満腹中枢が刺激されにくく、肥満傾向になることも。
● 発音・表情・集中力への影響
口周りの筋肉が発達しないと、発音が不明瞭になりやすく、表情筋の発達にも影響します。
さらに、咀嚼刺激が脳の活性化につながるため、噛まない子は集中力や学習意欲にも影響する可能性があります。
ご家庭でできる「噛む力」育成の工夫
1. 食材を変える
柔らかい食事ばかりではなく、繊維質や弾力のある食材を意識的に取り入れましょう。
例:にんじん・れんこん・きのこ・するめ・フランスパンなど
2. よく噛む習慣をつける
•「30回噛もう!」と声かけする
•一口量を少なくしてよく噛む
•家族で一緒にゆっくり食べる
3. 姿勢を整える
食事中は足が床につく椅子を使用し、背筋を伸ばして座るようにしましょう。
姿勢が崩れると、顎が下がって噛みにくくなります。
4. 鼻呼吸を促す
鼻づまりがある場合は耳鼻科で治療を。
食事中・睡眠中に口呼吸をしているようなら、歯科でも口唇閉鎖のチェックを受けましょう。
歯科医院でのチェックとサポート
伊皿子おおね歯科医院では、定期検診の際に咀嚼機能や口腔筋の発達状態も確認しています。
お子さまには「スマイルキッズプログラム」の一環として、噛み方・舌の動き・呼吸の状態などを総合的に評価。
必要に応じて、MFT(口腔筋機能療法)を取り入れ、噛む力・飲み込み方・舌の位置を正しく導く訓練を行っています。
また、矯正を専門的に行う女医の矯正医が常勤しており、咬合発達と顎の成長を見守りながら、早期の介入・アドバイスを行っています。
よくある質問(Q&A)
Q1. 噛む力は自然に強くなりますか?
ある程度は自然発達しますが、食生活や姿勢などの影響を強く受けます。
意識的に「噛む練習」を取り入れることが重要です。
Q2. どのくらい噛めばいいの?
目安は一口につき「20〜30回」。
ゆっくり食べることが、咀嚼筋の発達と消化の両面に効果的です。
Q3. 噛まない癖は歯並びに影響しますか?
はい。特に偏咀嚼は、顎の成長バランスを崩し、将来的な歯列不正につながる可能性があります。
まとめ
現代の子どもたちの「噛む力」は、生活環境や食習慣の変化によって大きく影響を受けています。
噛むことは単なる食事動作ではなく、歯並び・顎の発達・脳の発育・姿勢・集中力にまで関係する、まさに“全身の発達を支える基本動作”です。
日々の食事の中で「よく噛む」習慣を育て、咀嚼機能の発達をサポートすることが、健やかな成長の第一歩です。
お子さまの「食べ方」「噛み方」「口呼吸」が気になる方は、ぜひ一度、歯科医院でチェックを受けてみてください。
2025年11月17日 カテゴリ:未分類


