上唇小帯異常とは?― 赤ちゃんの歯並びや発音に影響する小さな筋の異常にご注意を
赤ちゃんや小さなお子さまの口元を観察すると、上唇の内側に筋のような突起が見えることがあります。これは「上唇小帯(じょうしんしょうたい)」と呼ばれ、唇と上あごの歯ぐきをつなぐ筋状の組織です。
この上唇小帯に異常があると、前歯のすき間(正中離開)や、発音障害、口腔清掃の困難など、さまざまな問題が生じることがあります。本コラムでは、上唇小帯異常の特徴や見分け方、治療の必要性、歯科医院での対応について詳しく解説いたします。
上唇小帯とは?
上唇小帯は、上唇と歯ぐきをつなぐ細い筋状の組織です。乳幼児期には比較的太く目立つことが多く、成長とともに自然に後退・薄くなっていくことが一般的です。
しかし、この小帯が太すぎたり、歯の間にまで入り込んでいたりする場合、歯並びや発音、日常の口腔ケアに悪影響を及ぼす「上唇小帯異常」と診断されることがあります。
上唇小帯異常の主な症状・サイン
以下のような症状が見られる場合は、上唇小帯異常の可能性があります:
•上の前歯にすき間がある(正中離開)
•上唇を大きく持ち上げると、歯ぐきに食い込むような筋が見える
•歯磨きの際に上唇を動かすと痛がる
•哺乳や咀嚼のしにくさを訴える(乳児期)
•サ行・タ行などの発音が不明瞭(幼児〜学童期)
ただし、見た目に異常があっても必ずしもすぐに治療が必要なわけではなく、成長とともに改善するケースもあるため、歯科医師による診断が大切です。
上唇小帯異常が引き起こすリスク
● 正中離開(上の前歯のすき間)
もっとも多いのが永久歯が生えそろっても前歯にすき間が残るケースです。上唇小帯が歯の間まで入り込んでいることで、前歯の萌出や移動を妨げてしまいます。
● 歯列不正の原因に
すき間だけでなく、前歯の位置異常や回転、唇と歯のバランス不良を引き起こすことがあります。
● 発音・会話の障害
上唇の動きが制限されると、発音時の唇の使い方に影響が出てしまい、サ行・パ行・マ行などの音が不明瞭になることがあります。
● 歯みがきの痛み・抵抗
唇を持ち上げたときに小帯が引っ張られ痛みを感じることで、仕上げ磨きを嫌がる原因になることもあります。
治療は必要?自然に治る?
すべての上唇小帯の目立ちが「異常」ではなく、以下のようなケースでは経過観察で問題ないことも多いです:
•乳歯の間にすき間があるだけで、永久歯がまだ生えていない
•発音や咀嚼に特に問題がない
•上唇の可動域が十分にあり、表情や日常生活に支障がない
しかし、永久歯が生えそろっても正中離開が閉じない場合や、矯正治療に影響があると診断された場合には、外科的処置(小帯切除)が必要になることもあります。
歯科医院での対応と治療の流れ
● 1. 診査・診断
•小帯の太さ、付着位置、動きや伸びなどを診察
•歯列や発音、清掃状態への影響を確認
•必要に応じてレントゲンや口腔内写真を撮影
● 2. 経過観察(初期)
•乳歯列期〜混合歯列期では、経過観察と日常生活での注意が基本
•フロスや歯磨き時の痛みがあれば丁寧なケア指導を実施
● 3. 小帯切除(必要時)
•正中離開の閉鎖を妨げる場合や矯正治療の妨げとなる場合に実施
•局所麻酔下での簡単な外科手術(レーザーまたはメス)
•通常は10〜15分程度の短時間で完了し、術後の腫れや痛みも少ない
※タイミングは永久歯が生えそろう前後、または矯正治療開始前後が適切とされます。
当院での取り組みとサポート
当院では、お子さまの成長段階に応じた上唇小帯の診査と評価を行っています。特に定期検診において、歯並びや小帯の状態を一緒に確認することで、見逃しを防ぎ、将来的なトラブルの予防に努めています。
また、当院では以下の体制を整えております:
•小児歯科・矯正歯科の両面からの包括的なチェック
•必要に応じた矯正専門医(女医)による相談・治療計画のご提案
•上唇小帯切除が必要と判断された場合のスムーズな対応
さらに、スマイルキッズプログラムを通じて、年齢ごとの口腔成長の見守りと、習癖・筋機能の評価を継続的に行っています。
保護者の方へのメッセージ
「上の前歯にすき間がある」「唇が引っ張られると痛がる」といったサインがあれば、上唇小帯異常の可能性があります。しかし、過度に心配せず、まずは歯科医院で適切な評価を受けることが大切です。
成長の過程で自然に改善されるケースもありますが、必要なタイミングで適切な処置を行うことで、将来的な歯並びや発音のトラブルを未然に防ぐことができます。
気になる症状があれば、お気軽にご相談ください。お子さまの健やかな口元の発育を、一緒にサポートしてまいります。
2025年6月30日 カテゴリ:未分類