姿勢の悪さが歯並びに影響?――スマホ姿勢と開咬・出っ歯の関係
はじめに
子どものスマートフォンやタブレット使用は日常となりました。
しかし最近、歯科の現場では**「姿勢の悪さ」と「歯並びの不正との関連」**が注目されています。
特に
•前歯が閉じない「開咬(かいこう)」
•上顎前突(いわゆる出っ歯)
といった歯列不正は、遺伝だけでなく姿勢が深く関わることが分かってきました。
本コラムでは「スマホ姿勢」が口腔機能に及ぼす影響を、小児歯科の視点から解説します。
なぜ姿勢が歯並びに影響するの?
歯並びは遺伝だけでなく、
「口腔機能」と「周囲の筋肉バランス」が大きく関与します。
姿勢が崩れる → 頭位が前方に出る → 舌や唇の位置・頬の筋緊張が変わる → 歯列や顎発育が歪む
この流れが成長期の子どもに特に影響します。
スマホ姿勢の典型例
•首が前に突き出る
•顎が下がる
•背中が丸まる
•気道が狭くなる
こうした姿勢は、口元の筋肉バランスを乱し、長期的に歯並びへ悪影響を及ぼすことがあります。
スマホ姿勢が招く2つの代表的な歯並びリスク
① 開咬(かいこう)
特徴:上下の前歯が噛み合わず隙間が空く状態
開咬は本来、指しゃぶり・舌突出癖などが主要因ですが、近年では
頭位が前傾したスマホ姿勢も要因の一つとして考えられています。
姿勢と開咬が結びつく理由
•頭が下がると舌は自然に後方・下方へ落ちやすい
•舌が上顎に接触しない
•前歯の萌出方向や噛み合わせ誘導が乱れる
舌は本来、上顎の口蓋に軽く触れ、歯列アーチを内側から支えています。
しかしスマホ姿勢により舌位が下がり続けると、
歯が外方向へ広がり、前歯が噛み合わない開咬傾向になることがあります。
② 上顎前突(出っ歯)
特徴:上の前歯や上顎が前へ出た状態
スマホ姿勢では
•下顎が後退しやすい
•唇の力が弱まる
•上唇閉鎖圧(歯を内側へコントロールする力)が低下
これにより前歯が前方へ押し出されやすい環境になります。
さらに、口呼吸傾向も誘発しやすく、
上顎骨の前方発育が助長され、いわゆる“出っ歯傾向”が進む可能性が指摘されています。
スマホ姿勢が間接的に歯並びを悪化させるメカニズム
① 舌位の低下
スマホを見る時、首が前に傾き顎が下がることで、舌は根元から落ち込みます。
舌が上顎から離れると、歯列は外へ向かって広がりやすく、噛み合わせ誘導が崩れます。
② 唇の閉鎖圧が弱まる
前かがみ姿勢では口元の筋緊張が低下しやすくなり、
口唇閉鎖力(歯列を適切に保持する力)が不足してしまいます。
唇の力が弱い → 前歯を抑える圧が減る → 歯が前に傾く
③ 口呼吸の誘発
首が前に傾く姿勢は気道を圧迫し、無意識の口呼吸を招きます。
口呼吸が続くと
•乾燥
•唾液自浄作用低下
•歯肉炎
•扁桃肥大
さらに舌位が下がり、上顎が狭くなり、歯並び不正の温床となります。
④ 全身姿勢と咬合への影響
骨盤の傾き、背骨の弧、肩の位置など身体全体の姿勢は、
顎位や噛み合わせにも連動しています。
特に子どもは成長途中で骨格が柔らかいため、
姿勢の崩れがそのまま顎発育と歯列形成に影響しやすいのです。
スマホ姿勢に要注意なサイン
以下が複数当てはまる場合は、歯科での評価をおすすめします:
✔ 食事中に口が開いている
✔ 会話時に舌が前に出る
✔ 前歯が噛み合わず隙間がある
✔ 前歯が前に傾いてきた
✔ 下顎が小さく見える
✔ 姿勢が丸く、猫背が目立つ
成長期に現れるサインを早く掴むことで、矯正治療の必要性や難易度が大きく変わります。
姿勢改善のために家庭でできる工夫
① スマホやタブレットの高さを調整する
目線より少し下程度に保持し、極端な前傾を避けましょう。
② 「肘を机に置く」の禁止
腕を固定して俯く姿勢は、舌位低下に直結します。
③ 1回の使用は30分以内
小休止を入れ、姿勢リセットを。
④ 正しい座り姿勢
•背筋を伸ばす
•足裏を床に付ける
•顎を引く
椅子と机の高さも大切です。
⑤ よく噛む習慣づくり
咀嚼は口腔周囲筋を鍛え、姿勢にも良い影響を与えます。
姿勢と歯並びの評価は歯科で可能です
歯科医院では
•舌位
•唇圧
•顎の発育状態
•噛み合わせ
•口呼吸傾向
などを総合的に評価します。
必要に応じて
•MFT(口腔筋機能療法)
•姿勢指導
•咬合誘導
•小児矯正
を組み合わせ、適切な成長発育をサポートします。
姿勢改善は矯正治療の効果も左右します
姿勢の崩れは、矯正治療後の後戻りにも影響します。
特に
•開咬傾向
•上顎前突
の改善を目指す場合、
「歯を動かす治療」+「姿勢や機能を整える取り組み」
をセットで行うことが大切です。
歯並びの見た目だけでなく、
「正しい噛み合わせ」
「健全な呼吸」
「舌や唇の正常な働き」
を守ることが、将来の健康につながります。
まとめ
✔ スマホ姿勢は舌位や唇圧を乱し、開咬や上顎前突を招くことがある
✔ 姿勢の乱れは口呼吸を誘発し、歯並び不正の背景になる
✔ 子どもの歯並び問題は、早期に気づけば改善しやすい
✔ 姿勢評価や口腔機能訓練は歯科の専門領域
✔ 歯列矯正と合わせ、成長期の姿勢管理が重要
姿勢は生活習慣の一部であり、
その積み重ねが歯列と顎の発達に影響します。
「最近スマホ時間が増えた」
「口が開いていることが多い」
「前歯が噛み合っていない気がする」
そんな気づきがある場合は、
一度歯科での口腔機能評価をおすすめします。
成長期に最適なサポートを行うことで、
将来の歯並びだけでなく、呼吸や姿勢、集中力や体の発達への良い影響も期待できます。
2025年12月22日 カテゴリ:未分類


