「口腔がん」は他人事じゃない:早期発見が命を救うセルフチェックのすすめ
はじめに
「口腔がん」と聞いて、自分には関係ないと思っていませんか?実は、日本では毎年約8,000人以上が口腔がんと診断されており(※1)、その数は年々増加傾向にあります。しかし、他のがんと違い、初期段階で発見されれば予後が良く、命を救える可能性も高いのです。本コラムでは、口腔がんの基本情報やリスク因子、セルフチェックの方法、歯科医院でできる早期発見の重要性について解説します。
口腔がんとはどんな病気か
口腔がんは、舌・頬・歯ぐき・口蓋・唇・口腔底(舌の下)など、口の中にできるがんの総称です。もっとも多くみられるのは舌がんで、次いで頬粘膜がん、歯肉がんなどがあります。がん細胞は口腔内の粘膜の変化から発生し、周囲の組織に浸潤したり、頸部リンパ節に転移したりする可能性があります。
意外に多い?口腔がんの発症率とリスク
口腔がんはがん全体の中では比較的少ないとされるものの、高齢化や生活習慣の変化により増加傾向にあります。特に60歳以上の男性に多く見られますが、最近では若年層や女性の発症例も報告されています。
こんな人は要注意:口腔がんの主なリスク因子
– 喫煙(たばこに含まれる化学物質が口腔粘膜に長期にわたり刺激を与える)
– 飲酒(特にアルコールとタバコの併用は相乗的にリスクを高める)
– 合わない入れ歯や被せ物、慢性的な粘膜の傷
– ヒトパピローマウイルス(HPV)感染
– 不十分な口腔衛生
これらの要因を複数抱えている方は、日常的なセルフチェックと歯科受診が重要です。
早期発見の重要性:治癒率を大きく左右するステージ
口腔がんは進行がんになると、手術で大きく組織を切除する必要があり、顔貌や発音、嚥下機能に影響を与えることもあります。しかし、初期の段階で発見されれば、比較的軽い処置や放射線治療で対応可能です。5年生存率は早期発見で約80%以上とされ(※2)、いかに早く見つけるかが命を守るカギとなります。
今日からできるセルフチェックのポイント
月に1回程度、ご自身で以下のポイントを鏡の前でチェックしてみましょう:
– 舌の裏・側面に赤みや白い斑点がないか
– 頬の内側にしこりや傷、ただれがないか
– 歯ぐきに出血や腫れ、硬い部分がないか
– 唇の裏側や口蓋にざらつきや変色がないか
– 痛みのない潰瘍が2週間以上続いていないか
こうした変化に気づいたら、すぐに歯科医院を受診してください。
歯科医院での定期チェックのすすめ
歯科医院では、視診・触診・専用ライトを用いた検診により、口腔がんの兆候を早期に発見できます。特に3ヶ月〜6ヶ月に1回の定期検診を受けることで、病変の変化を早期にとらえることが可能です。また、がん以外の口腔内疾患の予防や、歯周病・虫歯治療も同時に行える点がメリットです。
もし疑わしい症状が見つかったら
気になる症状がある場合は、歯科医院での初期診察を経て、必要に応じて病院の口腔外科やがん専門機関への紹介が行われます。細胞診や生検(組織を採取して検査する方法)により、がんかどうかの確定診断が行われ、早期であれば迅速な対応が可能です。
まとめ:口腔がんと共に生きないために ― あなたにできること
口腔がんは「早期発見・早期治療」が何よりも重要な病気です。決して他人事ではなく、誰にでも起こり得る可能性があります。日頃のセルフチェックと、信頼できる歯科医院での定期検診を習慣にしましょう。口の中に異変を感じたら、迷わず相談する勇気が命を守る第一歩になります。
※1:九州大学病院がんセンターのページを参照
https://www.gan.med.kyushu-u.ac.jp/result/oral_cancer/
※2:公益社団法人神奈川県歯科医師会のページを参照
https://www.dent-kng.or.jp/colum/basic/1199/
2025年7月17日 カテゴリ:未分類