口輪筋の発達と表情づくり――笑顔の土台はお口の筋肉から
はじめに
子どもの笑顔は、その子らしさや健やかな成長を映す大切なサインです。
しかしその「笑顔」をつくるためには、歯並びや歯の健康だけでなく、**お口の周りの筋肉=口輪筋(こうりんきん)**の発達が大きく関わっています。
近年、口呼吸や柔らかい食事、スマホ・タブレットの長時間使用などにより、口輪筋が十分に使われない子どもが増えています。
その結果、表情が乏しく見えたり、口がぽかんと開いた状態が続いたりといった変化が見られることも少なくありません。
本コラムでは、口輪筋の役割と発達の重要性、表情や歯並びとの関係について解説します。
口輪筋とはどんな筋肉?
口輪筋は、唇の周囲をぐるりと取り囲むように存在する筋肉で、
唇を閉じる・すぼめる・引き上げるといった動きに関わっています。
この筋肉は以下のような働きを担っています。
•口をしっかり閉じる(口唇閉鎖)
•食べ物や飲み物をこぼさずに摂取する
•発音や発語を安定させる
•表情(笑顔・すぼめ顔など)をつくる
•歯並びや噛み合わせを外側から支える
口輪筋は見た目の表情だけでなく、口腔機能全体の土台となる重要な筋肉です。
口輪筋の発達はいつ頃から重要?
口輪筋は生まれた直後から使われ始め、授乳・離乳食・咀嚼・発語などを通じて徐々に発達します。
特に重要なのは以下の時期です。
•乳児期:授乳による吸啜運動
•幼児期:噛む・話す・表情をつくる経験
•学童期:口腔機能の完成に向かう時期
この時期に口輪筋が十分に使われないと、筋力や協調性が育ちにくくなり、さまざまな影響が出ることがあります。
口輪筋が未発達だと起こりやすいこと
① 表情が乏しく見える
口輪筋が弱いと、唇を引き上げたり、口角をコントロールしたりする動きがうまくできません。
そのため、笑顔が作りにくい・無表情に見えるといった印象につながることがあります。
本人は楽しく過ごしていても、表情が伝わりにくく、対人関係に影響する場合もあります。
② 口がぽかんと開きやすい
口輪筋の筋力不足により、安静時に口を閉じ続けることが難しくなります。
いわゆる「ポカン口」は、口輪筋の機能低下が背景にあることが少なくありません。
口が開いた状態が続くと、
•口呼吸
•口腔内の乾燥
•虫歯・歯肉炎のリスク上昇
といった問題につながります。
③ 歯並びへの影響
歯並びは、舌からの内側の力と、唇・頬からの外側の力のバランスによって保たれています。
口輪筋が弱いと、前歯を内側に抑える力が不足し、出っ歯や歯列の不安定さにつながることがあります。
④ 発音や話し方への影響
唇を使う音(パ・バ・マ行など)は、口輪筋の働きが重要です。
筋力や協調運動が不十分だと、発音が不明瞭になったり、話す際に余分な力が入ったりすることがあります。
なぜ口輪筋が使われにくくなっているのか
近年、口輪筋の発達が不十分な子どもが増えている背景には、生活環境の変化があります。
•柔らかい食事が多い
•噛む回数が少ない
•口呼吸が習慣化している
•スマホ・タブレットで下を向く時間が長い
•会話や表情を使う機会が減っている
これらはすべて、口輪筋を十分に使わない要因となります。
口輪筋と「笑顔」の深い関係
笑顔は感情だけでなく、筋肉の協調運動によってつくられます。
口輪筋が適切に働くことで、口角が自然に引き上がり、表情が柔らかく見えます。
逆に、筋力が弱いと笑顔がぎこちなくなり、
「笑っているのに笑顔に見えない」
「口元が引きつって見える」
といった印象を与えることがあります。
口輪筋の発達は、見た目の印象だけでなく、コミュニケーションの質にも関係する要素です。
歯科でできる評価とサポート
歯科では、歯や歯並びだけでなく、以下のような点も確認します。
•安静時に口が閉じられているか
•唇に力が入っているか
•食事や会話時の口元の動き
•舌や頬との筋バランス
必要に応じて、口腔機能の評価やトレーニング(MFT:口腔筋機能療法)を行い、口輪筋を含む口周りの筋肉を整えていきます。
家庭で意識できるポイント
日常生活の中でも、口輪筋の発達を促すことは可能です。
•しっかり噛む食事を意識する
•姿勢を正し、口呼吸を防ぐ
•会話や表情をたくさん使う
•テレビやスマホを見る姿勢を見直す
特別なことをしなくても、口をしっかり使う生活習慣が大切です。
まとめ
- 口輪筋は笑顔・表情・口腔機能の土台となる筋肉
- 発達不足はポカン口や歯並び不正の一因になる
- 生活習慣の変化で口輪筋が使われにくくなっている
- 口輪筋の発達は見た目だけでなく機能面にも重要
- 歯科では口腔機能の視点からサポートが可能
「笑顔のつくり方」は、生まれつきだけで決まるものではありません。
日々の生活や成長の中で、口輪筋を正しく使うことで、自然で健康的な表情が育まれていきます。
口元や表情が気になる場合は、歯並びだけでなくお口の筋肉の使い方にも目を向けてみることが大切です。


