子どもの食べ方に現れるサイン ― クチャクチャ食べは口腔機能発達不全のサイン?
はじめに
「食事のときにクチャクチャ音を立てる」「口を開けたまま食べる」――
そんな食べ方が気になるお子さんはいませんか?
実はこのような「クチャクチャ食べ」には、口腔機能の発達に関わるサインが隠されている場合があります。
見た目のマナーだけでなく、噛む力・飲み込む力・口唇の閉じる力などが未発達であることが背景にあるのです。
本コラムでは、子どもの食べ方からわかる口腔機能の発達状態や、早期に気づくためのポイント、歯科医院での対応について詳しく解説します。
クチャクチャ食べとは?
「クチャクチャ食べ」とは、食事中に口を開けたまま咀嚼して音を立てる食べ方 のことです。
単なる癖やマナーの問題と考えられがちですが、実際には口唇閉鎖力(唇を閉じる力)や咀嚼機能、嚥下(飲み込み)の発達不足が関係していることが多くあります。
クチャクチャ食べの原因
1.口唇圧・口輪筋の未発達
唇をしっかり閉じる力が弱いと、咀嚼中に自然と口が開いてしまい、食べ物や空気が漏れてしまいます。
2.舌の動きの問題
舌の動きが未熟だと、食べ物を左右に移動させることができず、効率的に噛めません。結果的に、長時間クチャクチャ噛むことになります。
3.咀嚼筋の弱さ
やわらかい食べ物ばかり食べていると、咀嚼筋(咬筋・側頭筋など)が十分に発達せず、噛む力が弱くなります。
4.姿勢の悪さ
猫背や前かがみ姿勢では下顎の動きが制限され、正しい咀嚼リズムが崩れます。特に食卓の高さや椅子の位置が合っていないと、口の動きにも影響します。
5.鼻呼吸ができていない
鼻が詰まっている・口呼吸が習慣化していると、口を閉じて食事することが難しくなります。これもクチャクチャ食べの大きな要因です。
クチャクチャ食べがもたらす影響
1. 噛む力・飲み込む力の発達遅れ
食べ物をよく噛まないまま飲み込むため、咀嚼筋や舌筋の発達が遅れます。
2. 歯並びへの悪影響
口呼吸や唇の閉鎖不全が続くと、歯列が前に傾いたり、開咬や出っ歯を引き起こすことがあります。
3. 発音・構音への影響
舌や唇の使い方が不安定なまま成長すると、「さ行」「た行」などの発音が不明瞭になることがあります。
4. 消化への負担
しっかり噛まずに飲み込むため、胃腸に負担がかかり、消化不良を起こしやすくなります。
口腔機能発達不全症との関係
文部科学省や厚生労働省でも注目されている「口腔機能発達不全症」とは、食べる・話す・呼吸するなどの基本的な口の働きに問題が見られる状態を指します。
クチャクチャ食べは、その初期サインの一つ と考えられます。
•しっかり噛めない
•飲み込みが遅い
•食事中に口が開いている
•食べこぼしが多い
こうした行動が見られる場合、早期に対応することで発達の遅れを防ぐことができます。
ご家庭でできるチェックポイント
•食事中に口が開いていないか
•よく噛んでいるか、すぐ飲み込んでいないか
•食べこぼしが多くないか
•姿勢が崩れていないか
•食後に疲れた様子を見せないか
これらのサインが複数当てはまる場合は、口腔機能の評価をおすすめします。
改善のためにできること
1. 食事環境を整える
•椅子の高さを調整し、足裏が床につく姿勢で食べる
•スプーンや箸の持ち方を正しくサポートする
•テレビやスマホを消して、集中して食事する習慣を
2. 食材の工夫
•噛みごたえのあるメニューを少しずつ取り入れる
•よく噛む必要のあるおやつ(小魚・りんご・するめなど)を活用
3. 鼻呼吸を促す
鼻づまりがある場合は耳鼻科で治療を受けましょう。鼻で呼吸できることが正しい食べ方の基本です。
4. お口のトレーニング(MFT)
•ストローを使った吸う練習
•唇を閉じたまま風船を膨らませる
•舌を上あごにつけて「ポン」と音を出す
こうしたトレーニングで、口唇や舌、頬の筋力をバランスよく育てます。
歯科医院での対応
伊皿子おおね歯科医院では、お子さま一人ひとりの発達段階に合わせて口腔機能のチェックを行っています。
「スマイルキッズプログラム」を通じて、食べ方・飲み込み方・呼吸の状態などを総合的に評価し、必要に応じて MFT(口腔筋機能療法) を取り入れた改善指導を行います。
また、矯正を専門的に行う女医のドクターが在籍しているため、歯並びや顎の発育との関係についても専門的にサポートできます。
よくある質問(Q&A)
Q1.クチャクチャ食べは放っておくと治りますか?
一時的な癖で治る場合もありますが、長期間続く場合は筋力や機能の発達遅れが関係している可能性があります。
Q2.トレーニングは何歳から始められますか?
3歳頃から簡単な口の運動を取り入れることができます。小学校低学年までに始めると効果的です。
Q3.家で気をつけることはありますか?
「口を閉じて食べようね」と声かけするだけでなく、食事環境(姿勢・高さ・硬さ)も整えることが大切です。
まとめ
クチャクチャ食べは、単なるマナーの問題ではなく、口腔機能発達不全のサイン である可能性があります。
子どもの食べ方や姿勢、呼吸を日々観察し、気になる兆候があれば早めに歯科医院で相談しましょう。
正しい咀嚼と呼吸の習慣は、将来の歯並びや顔の発育、発音にも大きく関わります。
2025年12月1日 カテゴリ:未分類


