歯肉肥厚症とは? ――薬の副作用や遺伝が関係する歯ぐきの異常
はじめに
「歯ぐきが分厚くなってきた気がする」
「歯は痛くないのに、歯ぐきが盛り上がっている」
このような症状で来院される方の中に、**歯肉肥厚症(しにくひこうしょう)**と呼ばれる状態が見つかることがあります。
歯肉肥厚症は、歯周病のように炎症が強く出るケースもあれば、**薬の副作用や体質(遺伝)**によって起こることもあり、原因が一つではありません。
特に小児や若年者でも見られる点が、一般的な歯肉炎・歯周病と異なる特徴です。
本コラムでは、歯肉肥厚症の基本的な考え方から原因、注意点、歯科での対応までをわかりやすく解説します。
歯肉肥厚症とは?
歯肉肥厚症とは、歯ぐき(歯肉)が通常よりも厚く、盛り上がったように増殖する状態を指します。
炎症による一時的な腫れとは異なり、
•歯肉そのものが増殖している
•歯の表面を覆うように歯ぐきがかぶってくる
といった特徴があります。
見た目としては
•歯が短く見える
•歯ぐきがもこもこしている
•歯間部が埋まっている
と感じられることが多く、見た目や清掃性に大きな影響を及ぼします。
歯肉肥厚症の主な原因
① 薬の副作用による歯肉肥厚
歯肉肥厚症で特に重要なのが、特定の薬剤による副作用です。
代表的な薬剤には以下があります。
•抗てんかん薬(フェニトインなど)
•免疫抑制薬(シクロスポリンなど)
•一部の降圧薬(カルシウム拮抗薬)
これらの薬を長期間服用していると、歯肉の線維芽細胞が刺激され、歯ぐきが過剰に増殖することがあります。
特に小児期から服薬を続けている場合、永久歯が生えそろう時期と重なり、歯列や噛み合わせに影響することもあります。
② 遺伝性(遺伝性歯肉線維腫症)
まれではありますが、遺伝的な要因によって歯肉が肥厚するタイプも存在します。
この場合、
•炎症が少ない
•痛みがほとんどない
•家族内で似た症状が見られる
といった特徴があり、歯肉線維腫症と呼ばれることもあります。
乳歯列期や混合歯列期から症状が現れることがあり、歯の萌出が妨げられる原因になることもあります。
③ 歯周病・慢性炎症との関連
歯肉肥厚症は、歯周病や歯肉炎と完全に別の病気というわけではありません。
歯垢(プラーク)や歯石による慢性的な刺激が加わることで、肥厚がさらに目立つこともあります。
つまり
「薬の影響+清掃不良」
「体質+慢性炎症」
といった複合的な要因で症状が進行するケースも少なくありません。
歯肉肥厚症で起こりやすい問題
① 歯磨きがしにくくなる
歯ぐきが歯を覆うことで、歯ブラシが届きにくくなります。
結果としてプラークが溜まりやすくなり、
•歯肉炎
•虫歯
•口臭
といった二次的なトラブルを引き起こします。
② 歯の萌出障害
小児の場合、歯肉肥厚によって永久歯が正常に生えてこないことがあります。
歯が歯ぐきの中に埋まったままになったり、ずれた位置から萌出したりする原因となります。
③ 見た目への影響
歯肉が厚くなることで、
•歯が短く見える
•笑ったときに歯ぐきが目立つ
といった審美的な悩みにつながることもあります。
歯肉肥厚症は自然に治る?
歯肉肥厚症は、原因によって経過が異なります。
•炎症が主体の場合:清掃改善で軽減することあり
•薬剤性・遺伝性の場合:自然に完全に改善することは少ない
特に薬剤性の場合、自己判断で服薬を中止することは絶対に避ける必要があります。
主治医との連携が不可欠です。
歯科医院での対応
① 原因の評価
まずは
•服薬状況
•全身疾患の有無
•家族歴
•歯周状態
を丁寧に確認し、歯肉肥厚の背景を把握します。
② 口腔衛生管理の徹底
歯肉肥厚症では、プラークコントロールが非常に重要です。
•歯磨き指導
•専門的クリーニング
•定期的なメンテナンス
によって炎症の悪化を防ぎます。
③ 必要に応じた外科的対応
歯肉の増殖が強く、
•歯磨きが困難
•萌出障害がある
•機能・審美に支障が出ている
場合には、歯肉整形などの処置が検討されることもあります。
④ 医科との連携
薬剤性が疑われる場合は、処方医と相談し、
•薬の変更が可能か
•服薬継続の必要性
を踏まえた上で歯科的対応を進めます。
家庭で気づけるサイン
保護者やご本人が気づきやすいポイントには以下があります。
•歯ぐきが厚く、歯が短く見える
•歯ぐきが歯にかぶさってきた
•歯磨き時にブラシが入りにくい
•歯が生えてくるのが遅い
これらが見られる場合は、早めの歯科相談が大切です。
まとめ
- 歯肉肥厚症は歯ぐきが過剰に増殖する状態
- 薬の副作用や遺伝が関与することがある
- 小児から成人まで幅広く見られる
- 清掃不良が重なると症状が悪化しやすい
- 歯科では原因評価と継続的管理が重要
歯肉肥厚症は「腫れているだけ」と見過ごされがちですが、
背景に全身疾患や薬剤、成長発育の問題が隠れていることもある重要なサインです。
歯ぐきの形や厚みが気になる場合は、歯周病だけでなく、歯肉肥厚症の可能性も含めて評価を受けることが、将来的なトラブル予防につながります。
2026年1月26日 カテゴリ:未分類


