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閉塞性睡眠時無呼吸と歯科治療 ― 静かな“いびき”の影に潜む健康リスクとその対策

「いびきがうるさい」「夜中に息が止まっている」と家族に言われたことはありませんか?それは、単なるいびきではなく「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。中でも、もっとも多いタイプが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。
この疾患は、睡眠中に気道がふさがれることによって呼吸が止まる(あるいは著しく弱まる)状態を繰り返す病気であり、全身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
実はこのOSA、医科の分野だけでなく「歯科」でも治療の一端を担うことができることをご存じでしょうか。本コラムでは、OSAの基本的な知識から、歯科的アプローチの有効性、治療の流れ、そして患者さんの疑問への回答までを詳しくご紹介します。

1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは

■ 睡眠中の「無呼吸」がもたらす深刻な健康被害

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea:OSA)とは、睡眠中に気道が物理的にふさがれ、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が1時間あたり5回以上生じる状態をいいます。重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)で分類されます。

•軽症:AHI 5~15
•中等症:AHI 15~30
•重症:AHI 30以上

これらの呼吸停止は、身体に以下のような悪影響をもたらします。

•睡眠の質の低下(熟睡できない)
•日中の強い眠気、集中力の低下
•高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中のリスク増加
•交通事故や労働災害のリスク上昇
•性機能の低下やうつ症状の併発

とくに中高年男性に多い病気ですが、女性や子どもにも見られることがあり、近年ではその早期発見・早期治療の重要性が強く認識されるようになっています。

2. OSAの原因と発症メカニズム

OSAの主な原因は「上気道の閉塞」です。具体的には、以下のような要因が挙げられます。

■ 解剖学的な原因

•扁桃肥大
•舌が大きい(舌根沈下)
•下顎が小さい・後退している
•肥満による首周りの脂肪沈着
•鼻づまり(鼻中隔弯曲、アレルギー性鼻炎など)

■ 筋力の低下・加齢

睡眠中は全身の筋肉が緩むため、気道を支えている筋肉も緩みます。とくに仰向け寝では、舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道をふさぐ原因となります。

3. OSAの治療法にはどんなものがあるのか

OSAの治療には、医科と歯科の連携による複数のアプローチが存在します。

【医科領域での治療】

● CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
もっとも一般的な治療法で、マスクをつけて空気を送り込み、気道を強制的に広げる方法です。中等症〜重症の患者に適応されます。
● 減量指導・生活習慣の改善
肥満が関与している場合は、体重を減らすことが大きな改善につながります。
● 外科的治療(鼻中隔矯正、扁桃摘出、顎矯正など)
解剖学的な閉塞の程度が重い場合に検討されます。

4. 歯科でできるOSA治療:スリープスプリント(口腔内装置)

歯科領域でのOSA治療として注目されているのが「口腔内装置(Oral Appliance:OA)」を使ったスリープスプリント療法です。
この装置は、下顎を前方に固定するマウスピース型の装具で、睡眠中に気道が閉塞しないよう、下顎と舌の位置を前に引き出し、気道を広げる役割を果たします。

5. スリープスプリントの仕組みと効果

■ 構造と使用方法

スリープスプリントは、上下の歯列にフィットする透明または半透明のレジン製の装置で、装着時に下顎がわずかに前方に固定される設計となっています。
患者さんの顎や歯列に合わせたオーダーメイド製作のため、違和感が少なく、無理なく使用できるように調整されます。

■ 効果が期待できるケース

•軽度〜中等度のOSAの方
•CPAPに抵抗がある、または使えない方
•出張や旅行が多く、携帯性を重視したい方
•鼻呼吸が可能で、重度の鼻づまりがない方

実際に、軽度〜中等度の患者においては、睡眠時の無呼吸・低呼吸の回数が大きく減少し、日中の眠気やいびきが改善されたという報告が多数あります。

6. スリープスプリント製作の流れ

歯科医院でのスリープスプリント製作は、以下のようなステップで進行します。

【ステップ1】 医科での診断(紹介状が必要)

まず、耳鼻科や睡眠外来で睡眠検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)を受け、OSAの診断を受けます。その結果とともに、口腔内装置の適応があると判断された場合、歯科医院に紹介状が送られます。

【ステップ2】 歯科での口腔内検査と型取り

歯の状態、顎関節の可動域、歯周病の有無などをチェックした上で、上下顎の歯型を採取し、スリープスプリントを製作します。

【ステップ3】 装着・フィッティング

完成後に装着し、違和感がないか、下顎の前方位が適切かを確認・調整します。

【ステップ4】 定期的なフォローアップ

装置使用中は、数週間〜数か月後に再検査を行い、AHIの改善度や装着感を評価します。必要に応じて再調整も行います。

7. 歯科での治療に関するQ&A

Q1. 保険は使えるの?

A. 条件を満たせば保険適用可能です。
医科でOSAと診断され、スリープスプリントの適応とされた場合は、健康保険での作製が可能です。必要書類(診断書や紹介状)を持参してください。

Q2. 違和感はありませんか?

A. 初期は多少の違和感がありますが、多くの方が数日で慣れます。
下顎がやや前に出されるため、最初の数日は顎関節や歯に軽い緊張を感じることがあります。装置の調整や使用時間のコントロールで、スムーズに慣れることが可能です。

Q3. 装置を毎晩使わないとダメですか?

A. 基本的には毎晩の使用が推奨されます。
効果を持続させるためには、継続的な使用が必要です。ただし、旅行や短時間の仮眠時など、状況に応じた活用も可能です。

Q4. 歯が少なくても作れますか?

A. 状況によっては難しいこともありますが、部分入れ歯の併用などで対応可能な場合もあります。
口腔内の状態に応じて設計を調整することができますので、まずはご相談ください。

8. 医科との連携が鍵

睡眠時無呼吸は歯科だけで完結する治療ではありません。スリープスプリントを有効かつ安全に使うためには、耳鼻咽喉科や内科などの医師との密な連携が不可欠です。
また、歯科治療の副次的な効果として、スリープスプリントの使用中に発見される「顎関節症」や「歯ぎしり」「口腔乾燥症」といった別の問題も、適切に管理・治療することが重要です。

9. 睡眠は「歯科」でも支えられる

これまで、「いびき=ただの騒音」と思われていたものが、実は命に関わる重大な疾患のサインであることが分かってきました。そしてその治療には、医科と歯科が手を取り合い、総合的にケアしていくことが求められています。
スリープスプリントによる治療は、患者さんにとって比較的負担が少なく、継続しやすい選択肢のひとつです。毎日の眠りの質を高めることは、人生そのものの質を高めることにつながります。

まとめ ― 深い眠りは、健康な歯と顎から

「日中どうも眠い」「いびきが気になる」「夜中に何度も目が覚める」――その症状、もしかすると閉塞性睡眠時無呼吸が原因かもしれません。
当院では、医科からの紹介をもとに、患者様一人ひとりに合わせたスリープスプリントを製作し、睡眠の質と全身の健康改善をサポートしております。いびきや眠気でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
静かな眠りと、健康な毎日を、私たちと一緒に取り戻しましょう。

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