鼻づまりと歯並びの関係 ― アデノイド肥大がもたらす口腔機能への影響
はじめに
「子どもがいつも口を開けている」「寝ているときにいびきをかく」「口呼吸が多い」――
そんな様子に気づいたことはありませんか?
実は、その“鼻づまり”の裏に、歯並びや顎の成長に関わる深い問題が隠れていることがあります。
中でも代表的なのが、アデノイド肥大。鼻の奥にあるリンパ組織が大きくなることで、鼻呼吸を妨げ、長期的には口腔機能や歯列の発達に影響を及ぼします。
今回は、鼻づまりと歯並びの関係、そして歯科的視点からのアプローチについて詳しく解説します。
アデノイドとは?
アデノイドとは、鼻の奥(鼻咽頭)の上部にあるリンパ組織のことで、正式には「咽頭扁桃(いんとうへんとう)」と呼ばれます。
免疫の働きを担う器官で、ウイルスや細菌をブロックする役割を果たします。
しかし、3〜6歳ごろに最も大きくなりやすく、成長に伴って自然に小さくなるのが一般的です。
それでも、肥大が強い場合や慢性的な鼻炎・アレルギーがある場合には、呼吸や睡眠、顔の成長にまで影響を及ぼすことがあります。
アデノイド肥大によって起こる「鼻づまり」
アデノイドが大きくなると、鼻の奥の通り道(上咽頭)が塞がれ、空気の流れが悪くなります。
その結果、鼻呼吸がしにくくなり、口呼吸をする癖がついてしまいます。
よくある症状
•常に口が開いている
•いびきや無呼吸が見られる
•鼻声(声がこもる)
•食事中に口が閉じられない
•集中力が続かない
これらは単なる“鼻づまり”ではなく、呼吸・睡眠・発達に関わるサインでもあります。
鼻づまりが歯並びに影響する理由
1. 口呼吸による顎の発育抑制
鼻づまりが続き口呼吸が習慣化すると、舌が下がった位置に固定され、上あご(口蓋)の発育が妨げられます。
本来、舌が上あごに触れることで内側から骨を押し広げ、横幅のある健全な歯列を作ります。
しかし、舌が下がるとこの力が働かず、上顎が狭く高く(狭窄歯列) なり、歯が並びきらなくなります。
2. 顔貌(がんぼう)への影響
口呼吸が続くと、下顎が後退し、口元が出て見える「出っ歯(上顎前突)」の傾向になります。
また、口が常に開いているため、“ロングフェイス(縦に長い顔)” になることも。
これは骨格形成期に多い特徴であり、早期介入が重要です。
3. 唾液分泌の低下と虫歯リスク
口呼吸では口腔内が乾燥し、唾液による自浄作用が低下します。
その結果、虫歯や歯肉炎が起こりやすくなり、さらに口臭の原因にもなります。
口腔機能への影響
アデノイド肥大による鼻づまり・口呼吸は、単に「歯並びの乱れ」だけでなく、口腔機能全体にも影響します。
舌・唇・頬の筋バランスが崩れる
•舌が下がることで舌圧が低下し、発音が不明瞭になる
•唇を閉じる筋肉(口輪筋)が弱くなる
•食べこぼしや「クチャクチャ食べ」などの咀嚼異常
嚥下(えんげ:飲み込み)の異常
舌を正しく使えないことで、飲み込みの際に前歯を押し出すような異常嚥下癖が定着します。
これも歯列不正の原因になります。
ご家庭で気づけるサイン
保護者の方が早期に気づくことが、口腔機能の健全な発達にとって非常に重要です。
チェックしてみましょう
•口をぽかんと開けている
•寝ているときにいびきをかく
•鼻声・発音がこもる
•食事中に口を閉じられない
•顔が長く見える、口元が出てきた
これらの症状が見られる場合、耳鼻科と歯科の連携が必要です。
歯科でできるサポート
伊皿子おおね歯科医院では、アデノイド肥大や鼻づまりによる口呼吸の影響を考慮し、口腔機能発達支援を行っています。
当院の取り組み
•スマイルキッズプログラム
定期検診のたびに、呼吸・姿勢・歯列・舌の位置を総合的にチェック。
•MFT(口腔筋機能療法)
舌や唇の筋力を鍛えるトレーニングを通じて、口呼吸から鼻呼吸への移行をサポート。
•矯正専門の女医による治療
歯列や顎の発育を専門的に評価し、必要に応じて早期矯正や拡大装置などで骨格の成長をサポート。
鼻づまりそのものの治療は耳鼻科領域ですが、歯科では「口呼吸によって崩れた機能の回復」を担います。
よくある質問(Q&A)
Q1. アデノイド肥大は自然に治りますか?
成長とともに小さくなるケースもありますが、長期間の鼻づまりや口呼吸が続く場合は医師の診察が必要です。
Q2. 鼻呼吸に戻すにはどうすればいいですか?
耳鼻科での鼻づまり治療と並行して、歯科でMFTや呼吸トレーニングを行うことが効果的です。
Q3. 歯列矯正で鼻呼吸も改善しますか?
骨格的な制限が緩和されることで鼻腔が広がり、結果的に呼吸しやすくなる場合もあります。
ただし、原因がアデノイドにある場合は耳鼻科での治療が優先です。
まとめ
鼻づまりやアデノイド肥大は、単なる「呼吸の問題」ではなく、歯並び・顎の成長・口腔機能の発達に密接に関わっています。
放置すると、出っ歯や開咬、口呼吸の固定化など、さまざまな形で将来的な影響を残すことがあります。
早期に気づき、耳鼻科と歯科の両面からアプローチすることで、
子どもの健やかな呼吸と美しい歯並びを守ることができます。
お子さまが「いつも口を開けている」「鼻づまりが続いている」ようであれば、
ぜひ一度、歯科医院でお口と呼吸の状態をチェックしてみてください。
2025年12月9日 カテゴリ:未分類


