白金高輪の歯医者伊皿子おおね歯科医院。白金高輪駅、泉岳寺駅徒歩5分

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閉塞性睡眠時無呼吸と歯科治療 ― 静かな“いびき”の影に潜む健康リスクとその対策

「いびきがうるさい」「夜中に息が止まっている」と家族に言われたことはありませんか?それは、単なるいびきではなく「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。中でも、もっとも多いタイプが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。
この疾患は、睡眠中に気道がふさがれることによって呼吸が止まる(あるいは著しく弱まる)状態を繰り返す病気であり、全身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
実はこのOSA、医科の分野だけでなく「歯科」でも治療の一端を担うことができることをご存じでしょうか。本コラムでは、OSAの基本的な知識から、歯科的アプローチの有効性、治療の流れ、そして患者さんの疑問への回答までを詳しくご紹介します。

1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは

■ 睡眠中の「無呼吸」がもたらす深刻な健康被害

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea:OSA)とは、睡眠中に気道が物理的にふさがれ、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が1時間あたり5回以上生じる状態をいいます。重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)で分類されます。

•軽症:AHI 5~15
•中等症:AHI 15~30
•重症:AHI 30以上

これらの呼吸停止は、身体に以下のような悪影響をもたらします。

•睡眠の質の低下(熟睡できない)
•日中の強い眠気、集中力の低下
•高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中のリスク増加
•交通事故や労働災害のリスク上昇
•性機能の低下やうつ症状の併発

とくに中高年男性に多い病気ですが、女性や子どもにも見られることがあり、近年ではその早期発見・早期治療の重要性が強く認識されるようになっています。

2. OSAの原因と発症メカニズム

OSAの主な原因は「上気道の閉塞」です。具体的には、以下のような要因が挙げられます。

■ 解剖学的な原因

•扁桃肥大
•舌が大きい(舌根沈下)
•下顎が小さい・後退している
•肥満による首周りの脂肪沈着
•鼻づまり(鼻中隔弯曲、アレルギー性鼻炎など)

■ 筋力の低下・加齢

睡眠中は全身の筋肉が緩むため、気道を支えている筋肉も緩みます。とくに仰向け寝では、舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道をふさぐ原因となります。

3. OSAの治療法にはどんなものがあるのか

OSAの治療には、医科と歯科の連携による複数のアプローチが存在します。

【医科領域での治療】

● CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
もっとも一般的な治療法で、マスクをつけて空気を送り込み、気道を強制的に広げる方法です。中等症〜重症の患者に適応されます。
● 減量指導・生活習慣の改善
肥満が関与している場合は、体重を減らすことが大きな改善につながります。
● 外科的治療(鼻中隔矯正、扁桃摘出、顎矯正など)
解剖学的な閉塞の程度が重い場合に検討されます。

4. 歯科でできるOSA治療:スリープスプリント(口腔内装置)

歯科領域でのOSA治療として注目されているのが「口腔内装置(Oral Appliance:OA)」を使ったスリープスプリント療法です。
この装置は、下顎を前方に固定するマウスピース型の装具で、睡眠中に気道が閉塞しないよう、下顎と舌の位置を前に引き出し、気道を広げる役割を果たします。

5. スリープスプリントの仕組みと効果

■ 構造と使用方法

スリープスプリントは、上下の歯列にフィットする透明または半透明のレジン製の装置で、装着時に下顎がわずかに前方に固定される設計となっています。
患者さんの顎や歯列に合わせたオーダーメイド製作のため、違和感が少なく、無理なく使用できるように調整されます。

■ 効果が期待できるケース

•軽度〜中等度のOSAの方
•CPAPに抵抗がある、または使えない方
•出張や旅行が多く、携帯性を重視したい方
•鼻呼吸が可能で、重度の鼻づまりがない方

実際に、軽度〜中等度の患者においては、睡眠時の無呼吸・低呼吸の回数が大きく減少し、日中の眠気やいびきが改善されたという報告が多数あります。

6. スリープスプリント製作の流れ

歯科医院でのスリープスプリント製作は、以下のようなステップで進行します。

【ステップ1】 医科での診断(紹介状が必要)

まず、耳鼻科や睡眠外来で睡眠検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)を受け、OSAの診断を受けます。その結果とともに、口腔内装置の適応があると判断された場合、歯科医院に紹介状が送られます。

【ステップ2】 歯科での口腔内検査と型取り

歯の状態、顎関節の可動域、歯周病の有無などをチェックした上で、上下顎の歯型を採取し、スリープスプリントを製作します。

【ステップ3】 装着・フィッティング

完成後に装着し、違和感がないか、下顎の前方位が適切かを確認・調整します。

【ステップ4】 定期的なフォローアップ

装置使用中は、数週間〜数か月後に再検査を行い、AHIの改善度や装着感を評価します。必要に応じて再調整も行います。

7. 歯科での治療に関するQ&A

Q1. 保険は使えるの?

A. 条件を満たせば保険適用可能です。
医科でOSAと診断され、スリープスプリントの適応とされた場合は、健康保険での作製が可能です。必要書類(診断書や紹介状)を持参してください。

Q2. 違和感はありませんか?

A. 初期は多少の違和感がありますが、多くの方が数日で慣れます。
下顎がやや前に出されるため、最初の数日は顎関節や歯に軽い緊張を感じることがあります。装置の調整や使用時間のコントロールで、スムーズに慣れることが可能です。

Q3. 装置を毎晩使わないとダメですか?

A. 基本的には毎晩の使用が推奨されます。
効果を持続させるためには、継続的な使用が必要です。ただし、旅行や短時間の仮眠時など、状況に応じた活用も可能です。

Q4. 歯が少なくても作れますか?

A. 状況によっては難しいこともありますが、部分入れ歯の併用などで対応可能な場合もあります。
口腔内の状態に応じて設計を調整することができますので、まずはご相談ください。

8. 医科との連携が鍵

睡眠時無呼吸は歯科だけで完結する治療ではありません。スリープスプリントを有効かつ安全に使うためには、耳鼻咽喉科や内科などの医師との密な連携が不可欠です。
また、歯科治療の副次的な効果として、スリープスプリントの使用中に発見される「顎関節症」や「歯ぎしり」「口腔乾燥症」といった別の問題も、適切に管理・治療することが重要です。

9. 睡眠は「歯科」でも支えられる

これまで、「いびき=ただの騒音」と思われていたものが、実は命に関わる重大な疾患のサインであることが分かってきました。そしてその治療には、医科と歯科が手を取り合い、総合的にケアしていくことが求められています。
スリープスプリントによる治療は、患者さんにとって比較的負担が少なく、継続しやすい選択肢のひとつです。毎日の眠りの質を高めることは、人生そのものの質を高めることにつながります。

まとめ ― 深い眠りは、健康な歯と顎から

「日中どうも眠い」「いびきが気になる」「夜中に何度も目が覚める」――その症状、もしかすると閉塞性睡眠時無呼吸が原因かもしれません。
当院では、医科からの紹介をもとに、患者様一人ひとりに合わせたスリープスプリントを製作し、睡眠の質と全身の健康改善をサポートしております。いびきや眠気でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
静かな眠りと、健康な毎日を、私たちと一緒に取り戻しましょう。

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歯科治療と“鼻うがい”の意外な関係 ― 口腔の健康を支えるもうひとつのセルフケア

「鼻うがい」と聞くと、風邪予防や花粉症対策など、耳鼻科領域のセルフケアというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実は、この鼻うがいが、歯科の治療や予防においても一定のメリットを持っていることをご存じでしょうか。
本コラムでは、鼻うがいとは何かという基本的な解説から始まり、正しい方法、歯科領域での有用性、さらには「鼻うがいって痛くないの?」「本当に効果があるの?」といった患者さんの素朴な疑問にまで、丁寧にお答えしていきます。

1. そもそも「鼻うがい」とは?

鼻うがいとは、生理食塩水などの洗浄液を使って、鼻の中(鼻腔)や副鼻腔に付着したウイルス・細菌・花粉・ほこりなどを洗い流すセルフケア方法のことです。医学的には「鼻腔洗浄(nasal irrigation)」や「鼻洗浄」とも呼ばれます。
鼻の奥と喉(上咽頭)はつながっており、そこに付着した異物が原因で炎症や感染症が起こることがあります。鼻うがいはこの部分を清潔に保つことで、風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎の予防や症状軽減に役立ちます。

2. 鼻うがいの具体的なやり方

鼻うがいにはいくつかの方法がありますが、一般的な家庭向けには市販の専用キットや器具を使ったものが安全で簡単です。以下に、基本的な手順を紹介します。

【必要なもの】

•市販の鼻うがいキット(洗浄ボトルと洗浄液パウダー付き)
•または、自作の生理食塩水(0.9%の濃度:500mlのぬるま湯に食塩4.5g)

【手順】

1.洗浄液を準備する
人肌程度(35〜37℃)に温めた食塩水を使います。冷たい水や濃度が適切でない水は、刺激や痛みの原因となります。
2.前かがみで頭を傾ける
洗面所で少し前屈みになり、顔を斜めに傾けて、片方の鼻の穴が上になるようにします。
3.洗浄液を鼻に注ぐ
上側の鼻の穴からゆっくりと洗浄液を注ぎます。液体は反対側の鼻の穴、または口から自然に流れ出ます。
4.逆側も同じように洗浄
左右の鼻を交互に洗いましょう。
5.軽く鼻をかむ
強くかまず、残った液体を静かに排出します。
6.洗浄器具を洗浄・乾燥させる
細菌繁殖を防ぐため、毎回きちんと清掃しましょう。
※医療機関や薬局では、初心者でも使いやすいキットが多く販売されています。

3. 鼻うがいと歯科治療の関係とは?

一見、鼻と歯は別の領域に思えますが、実は密接に関連しています。鼻うがいが歯科の治療や予防に良い影響をもたらす理由を、以下に分かりやすくご説明します。

■ 1. 上顎洞と歯の根の位置関係

上顎の奥歯(特に6番、7番、8番)は、上顎洞と呼ばれる副鼻腔に非常に近接しています。時に歯の根が上顎洞内に突き出していることもあるため、鼻や副鼻腔の炎症(副鼻腔炎)は、歯の痛みや違和感の原因となることがあります。
また、歯の根の先にできた炎症(根尖病変)が副鼻腔炎を引き起こすこともあり、これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。鼻うがいは、こうした上顎洞の清潔維持に役立つため、歯科治療と密接な関係を持ちます。

■ 2. 口呼吸の改善による歯周環境の向上

鼻づまりや慢性的な鼻炎を抱えていると、無意識のうちに口呼吸になりがちです。口呼吸は唾液の自浄作用を妨げ、口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯・歯周病・口臭の原因になります。
鼻うがいにより鼻の通りが良くなると、自然な鼻呼吸がしやすくなり、口腔内の湿潤環境が保たれることで、歯周組織の健康を維持しやすくなります。

■ 3. 歯科治療後のトラブル予防

上顎洞に近い部位で抜歯やインプラントなどの外科処置を行った後、細菌感染による副鼻腔炎を予防する目的で鼻うがいを勧めるケースがあります。特に、術後の違和感や鼻の奥の圧迫感がある際には、鼻うがいによって鼻腔内を清潔に保つことが推奨されることもあります。

4. 鼻うがいに関するよくある質問と答え

Q1. 鼻うがいって痛くないの?

A. 正しい方法と適切な濃度で行えば、基本的に痛みはありません。
鼻に水を入れる=ツンとしそう…とイメージされがちですが、それは水道水や真水を使用した場合です。生理食塩水(0.9%)は体液とほぼ同じ濃度なので、鼻の粘膜への刺激が少なく、むしろスッキリとした感覚を得られます。冷たい水や塩分濃度の間違いがあると痛みを感じやすくなるため、使用方法を守ることが大切です。

Q2. 毎日やってもいいの?

A. 1日1〜2回までが目安です。やりすぎには注意が必要です。
過度な鼻うがいは、鼻の粘膜や常在菌のバランスを崩す可能性があります。毎日の予防ケアとしては1日1回、花粉の多い日や風邪をひいたときなどは朝晩2回に増やす程度が推奨されます。

Q3. 子どもでもできるの?

A. 小学生以上であれば可能ですが、無理のない範囲で行いましょう。
子ども用の鼻うがい器具や洗浄液も販売されています。ただし、本人の意思や理解がないまま行うと嫌がることも多いため、耳鼻科医や小児科医の指導のもとで取り入れると安心です。

Q4. 風邪や歯の痛みがあるときでもして大丈夫?

A. 鼻炎や風邪の初期には有効です。歯の痛みがあるときは原因次第です。
風邪や鼻づまりの初期であれば、鼻うがいは効果的です。ただし、強い炎症や膿がある場合には医師の診察を優先してください。
また、歯の痛みが副鼻腔炎と関係している場合は、鼻うがいが症状軽減に寄与することもありますが、自己判断ではなく、歯科医院での診断を受けた上で行うようにしましょう。

5. 鼻うがいを取り入れるときのポイント

鼻うがいは万能ではありませんが、正しく取り入れれば、日常の口腔ケア・全身の健康維持に大きく役立つセルフケア手段です。

● 鼻づまりがあるときは無理に行わない

強く圧をかけて液体を流し込むと、耳に液が入る恐れがあるため、鼻の通りが悪いときは無理せず様子を見ましょう。

● 毎日のルーティンとして無理なく続ける

「歯磨きの後に鼻うがいをする」など、生活の中に組み込むと続けやすくなります。

● 医師のアドバイスを活用する

副鼻腔炎の持病がある方や、上顎洞に問題のある歯科治療を受けた方は、耳鼻科・歯科医師の指導のもとでの使用が安全です。

6. 歯科医院で鼻うがいを勧めるケースとは?

すべての患者さんに対して鼻うがいを推奨するわけではありませんが、以下のような場合においては、歯科医師が鼻うがいを提案することがあります。
•上顎の奥歯の治療後(特に抜歯・インプラントなど)
•口呼吸が強く、歯周病が進行しやすい患者さん
•鼻腔〜副鼻腔に炎症を繰り返す患者さん(歯性上顎洞炎のリスクがある場合)
•全身疾患により感染予防が特に重要な患者さん(糖尿病など)
患者さんの状態や生活習慣に応じて、口腔ケアの延長線上として、鼻うがいという選択肢を提案するのです。

まとめ ― 鼻と歯はつながっている。鼻うがいは“口腔環境”を守るケアのひとつ

鼻うがいは、風邪や花粉症対策だけでなく、歯科領域でも意外な活躍を見せるセルフケアのひとつです。上顎洞と歯の位置関係、口呼吸の予防、術後の感染リスクの軽減など、歯科治療をより快適かつ安全に進めるための補助手段として、活用する価値があります。
「鼻うがいなんて自分には関係ない」と思っていた方も、ぜひ一度、歯や口の健康という視点から見直してみてください。
当院でも、必要に応じて鼻うがいを含む全身的なケアのアドバイスを行っております。ご不明な点や興味のある方は、お気軽にご相談ください。

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口唇閉鎖不全症(ポカン口)とは ― お口が閉じられない子どもたちと向き合うために

「いつもお口がぽかんと開いている」「気がつくと口呼吸をしている」「寝ている間も口を開けている」――そんな様子が気になる子どもはいませんか?
こうした状態が慢性的に続く場合、それは「口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)」という、成長発達の過程で起こる機能的な障害である可能性があります。
本コラムでは、近年増加傾向にあるこの「口唇閉鎖不全症」について、定義・原因・リスク・治療法を医学的・歯科的な観点から包括的に解説します。特に、幼児期から学童期にかけての子どもたちの成長に重要なテーマとして、保護者・教育者・医療従事者の皆様に知っておいていただきたい内容をまとめました。

第1章:口唇閉鎖不全症(ポカン口)とは?

■ 1-1. どんな状態を指すのか

口唇閉鎖不全症とは、安静時や睡眠時において、上下の唇が自然に閉じられていない状態が慢性的に続いていることを指します。俗に「ポカン口」「お口ポカン」とも呼ばれ、見た目の特徴が明らかであるため、保護者の方からも気づかれやすい傾向にあります。
以下のような状態が見られたら、注意が必要です:
•無意識のうちに口が開いている
•鼻呼吸がうまくできない、もしくは常に口呼吸
•食事中に口を開けたまま噛んでいる
•発音がはっきりしない、話し方がぼんやりしている
•唇が乾燥している、口内炎ができやすい

■ 1-2. なぜ問題になるのか

「口が開いているだけで病気なの?」と思われるかもしれませんが、この状態が慢性化すると、歯列不正・口腔機能の発達遅延・免疫低下・姿勢の歪みなど、身体全体に悪影響を及ぼすことがわかってきています。
子どもの発達段階において、お口を正しく閉じて呼吸するという習慣は、顔貌の成長、顎の発育、正しい舌の位置づけ、咀嚼・嚥下・構音機能の形成などに大きく関与しています。つまり、単なる「見た目の癖」ではなく、「将来的な健康や生活の質に直結する問題」なのです。

第2章:口唇閉鎖不全症の原因

口唇閉鎖不全症は、さまざまな要因が絡み合って発症する「多因子性」の問題です。主な原因を下記に分類して解説します。

■ 2-1. 解剖学的要因(構造的な問題)

•上顎前突(出っ歯):前歯が突き出していることで、唇が閉じづらくなる
•下顎劣成長:下顎が小さい・奥まっていると舌が奥に落ちやすくなる
•短い上唇・厚い舌・舌小帯異常:舌や唇の形状の問題で閉鎖力が不足

■ 2-2. 習慣的要因(行動や生活環境)

•口呼吸の習慣化:アレルギー性鼻炎・鼻中隔弯曲などで鼻が通りにくい
•指しゃぶり・おしゃぶりの長期使用:口周りの筋肉の発達を妨げる
•食生活の変化:柔らかい食事により咀嚼力・筋肉が育たない
•スマホやゲームの長時間使用:前かがみ姿勢による顎・舌の筋力低下

■ 2-3. 心理的・社会的要因

•無表情・感情表出の乏しさ:唇や表情筋が使われず機能低下する
•学習環境の変化:コロナ禍によるマスク生活やコミュニケーションの減少も一因とされています

第3章:口唇閉鎖不全がもたらすリスク

口が閉じられない状態は、見た目以上にさまざまなリスクを内在しています。以下に、代表的な問題を挙げます。

■ 3-1. 歯並び・噛み合わせへの影響

•唇が閉じられないことで舌が前方に出る癖(舌癖)が固定され、上顎前突・開咬・過蓋咬合などの不正咬合が進行します。
•唇の筋力が不足していると、歯の内外からのバランスが崩れ、歯列弓の発育が阻害されます。

■ 3-2. 口腔機能の発達障害

•嚥下(飲み込み)の際に正しい舌の動きができない
•咀嚼機能が未発達で、消化器官への負担が増す
•発音が不明瞭(特にサ行・タ行など)で、言語発達に影響する

■ 3-3. 呼吸機能・免疫への悪影響

•鼻呼吸ができないため、口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯・歯肉炎・口臭の原因に
•ウイルスや細菌が直接喉に届きやすく、風邪をひきやすい、アレルギーの悪化

■ 3-4. 姿勢・筋力バランスへの影響

•頭が前に出た「ストレートネック」や猫背が進行
•顎・首・肩まわりの筋肉が硬直し、頭痛や肩こりの原因に
•顔貌の左右差や骨格成長のアンバランスが生じる可能性

第4章:口唇閉鎖不全症の診断と評価

■ 4-1. 歯科医院での診断方法

歯科医院では、以下のような評価が行われます。
•口唇閉鎖力の測定(リップル・オロスタット)
•口唇閉鎖時の表情・筋緊張の観察
•咬合診査(不正咬合の有無)
•鼻呼吸機能の確認(鼻腔通気性テスト)
•舌の位置や動きの観察(舌小帯の短縮も確認)

■ 4-2. 保護者からの聞き取りも重要

•就寝中の口の開き具合、いびき、歯ぎしりの有無
•食事中の様子(こぼす、時間がかかる、片側で噛むなど)
•発音や滑舌についての指摘歴
•日常生活の姿勢、集中力、呼吸様式など

第5章:口唇閉鎖不全症の治療と対応法

治療は、原因や重症度に応じて多面的に行います。

■ 5-1. 口腔筋機能療法(MFT)

口の周りの筋肉(口輪筋、頬筋、舌筋など)を鍛えるリハビリ療法です。
主な訓練内容:
•風船ふくらまし、ストロー吸引
•舌の上下・左右運動
•リップトレーナー(専用器具)によるトレーニング
•「あいうべ体操」やガムトレーニング

■ 5-2. 生活習慣・姿勢の見直し

•食事の姿勢や噛む回数を増やす工夫
•スマホ・ゲームの時間制限
•口を閉じる習慣づけ(「おくちチャック」など)

■ 5-3. 鼻呼吸の確立と耳鼻科との連携

鼻炎・アデノイド肥大・鼻中隔弯曲など、鼻の構造的問題がある場合は、耳鼻科医と連携して治療を行います。

■ 5-4. 矯正治療・咬合改善

歯列不正や顎の劣成長がある場合は、早期矯正(プレオルソ・マイオブレースなど)を併用することで、より良い結果が得られます。

第6章:予防と家庭でできるサポート

■ 家庭でできること一覧
実践項目 目的
姿勢よく食事をする 顎・舌の正しい使い方を促す
1口30回噛む 咀嚼力と顎の成長促進
「おくちチャック」ルール 唇を閉じる意識づけ
鼻呼吸トレーニング アレルギー対策と口呼吸防止
就寝前の唇ストレッチ 緊張緩和と習慣化
口の体操(あいうべ体操) 表情筋・口唇筋の活性化

第7章:放置してはいけない理由と社会的意義

口唇閉鎖不全症は、成長とともに自然に治ると誤解されがちです。しかし、早期に対応しなければ、発育・学習・コミュニケーション能力にまで悪影響が及ぶ可能性があります。
特に小児期は、「お口の機能」が「脳の発達」「社会性の形成」にも関係しており、子どもの将来の生活の質(QOL)を大きく左右する重要な分野です。

まとめ:お口の“ふた”が閉まることで、未来がひらく

口唇閉鎖不全症(ポカン口)は、単なる見た目の問題ではなく、**全身の健康や発育に直結する“警告サイン”**です。
早期発見・早期対応ができれば、多くの場合改善が可能です。
まずは「口が開いていること」に気づき、家庭・学校・医療機関が一体となって支援していくことが、子どもたちの健やかな未来につながります。
歯科医院では、機能面・習慣面・矯正面から、総合的に対応できます。
「もしかして…」と気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。

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小児口腔機能発達不全症とは ― お口の発達と子どもの健やかな成長の関係

現代の子どもたちに増えているとされる「小児口腔機能発達不全症(しょうにこうくうきのうはったつふぜんしょう)」。これは、歯並びや噛み合わせの問題に限らず、「うまく噛めない」「飲み込みがうまくできない」「口がぽかんと開いている」「発音が不明瞭」など、食べる・話す・呼吸するといった日常の基本的な口腔機能の発達が十分でない状態を指します。
一見、些細なクセや性格のように見えるこれらの症状も、放っておくと全身の発育や社会生活に影響を及ぼす可能性があります。このコラムでは、小児口腔機能発達不全症の定義、症状、原因、診断、そして歯科医院を中心とした具体的な対応方法について詳しく解説します。

1. 小児口腔機能発達不全症とは?

小児口腔機能発達不全症は、2018年に日本歯科医学会によって保険病名として新設された比較的新しい概念です。口腔機能のうち「咀嚼(そしゃく)」「嚥下(えんげ)」「発音」「呼吸」など、複数の働きが年齢相応に発達していない、あるいは機能低下している状態が、複合的に認められることが診断の前提となります。

■ 主な症状(1つでも複数でも該当あり)

•食事中にこぼす、噛むのが遅い・噛まずに飲み込む
•飲み込みがぎこちない、よくむせる
•舌や唇の動きが鈍い
•発音がはっきりしない
•いつも口が開いている(口呼吸)
•指しゃぶり、舌癖(舌を前に出す)、唇を噛む癖が続いている
•歯並びや顎の発育の遅れがある
これらの症状は一見軽度に見えても、口腔機能の連携(運動・感覚・意識)の不調和を示していることが多く、発育とともに悪化するリスクもあるため、早期の気づきと対応が求められます。

2. 小児口腔機能が発達しない背景

■ 現代の子どもたちに増えている原因

小児口腔機能発達不全症が近年増加傾向にある背景には、以下のような社会的・環境的な要因があります。
① 食生活の変化
柔らかく加工された食事(ファストフード・レトルト・冷凍食品など)の摂取が増えたことで、咀嚼回数が減り、顎の発育が十分になされない子どもが増えています。
② 生活習慣の乱れ・運動不足
外遊びやスポーツの機会が減ったことにより、全身の筋肉と連動する顎・口腔周囲の筋肉の発達も未熟になりがちです。
③ スマホ・ゲームの長時間使用
下を向いた姿勢や口を閉じずに過ごす時間が長くなり、口呼吸や口腔機能の低下を引き起こすリスクがあります。
④ 母乳・離乳食の影響
母乳を早期にやめたり、離乳食のステップが十分でなかった場合、口唇・舌・頬の協調運動がうまく育たず、嚥下・咀嚼・構音の発達が遅れることがあります。

3. どのように診断するのか?

■ 歯科医院での評価方法

歯科医院では、以下のような観点から総合的に判断します。
1. 問診・保護者からのヒアリング
食事の様子、哺乳や離乳食の時期、言葉の発達状況、クセ(指しゃぶり・舌癖など)などを詳細に確認します。
2. 口腔内および顔面の観察
顎の大きさ、歯列の状態、舌・唇・頬の動き、表情筋の使い方などを観察します。
3. 専門的検査
•嚥下評価:飲み込みの様子をチェック(必要に応じて医科連携)
•発音・構音評価:舌の動き・発音明瞭度
•筋機能評価:口輪筋・舌筋・咬筋のバランスと発育状況

■ 診断基準の一例(複数該当で診断)

•食べ物をよくこぼす、時間がかかる
•飲み込むときにあごや口の動きが不自然
•舌を突き出す、指しゃぶりが残る
•発音が不明瞭で言い直されることが多い
•常に口を開けている
•鼻呼吸ができず、睡眠時にいびきがある

4. 歯科医院でできる対応と治療

■ 小児口腔機能発達不全症の基本方針

この疾患の治療は、主に「口腔機能の再教育」「筋機能訓練」「生活習慣の改善」などを組み合わせて行われます。歯列矯正や装置療法だけでなく、子どもの発育と習慣に合わせた“行動療法”が中心となります。

■ 主な対応内容

① MFT(口腔筋機能療法)
舌、唇、頬の筋肉を強化し、正しい動きを覚えさせる訓練です。専用の器具やエクササイズを通じて楽しく行えます。
② 食べ方・飲み込み方の指導
食事中の姿勢、噛む回数、飲み込む順序を確認・練習し、嚥下機能を自然に高めます。
③ 呼吸法の指導(鼻呼吸トレーニング)
口呼吸をしている子どもには、鼻呼吸を促す運動やトレーニングを通じて、呼吸様式の改善を図ります。
④ 悪習癖の除去(指しゃぶり・舌癖など)
行動療法や装置を用いて、悪習癖を無理なくやめられるように支援します。
⑤ 必要に応じて矯正治療や連携医療(耳鼻科・小児科など)
歯列不正や鼻閉など他科的要因がある場合には、専門医との連携を取りながら治療を進めます。

5. 年齢ごとの注意ポイントと対応

年齢 特徴 注意すべき点 対応例
1〜2歳 離乳完了期 哺乳・離乳の完了段階 飲み込みの確認、スプーンの使い方の指導
3〜5歳 咀嚼・発音の形成期 口呼吸、舌癖、発音不明瞭 MFT初期訓練、遊び感覚のトレーニング
6〜8歳 学童期前半 永久歯への交換開始 嚥下再学習、鼻呼吸への移行、早期矯正相談
9〜12歳 顎骨成長ピーク期 顎の発達不調、構音不良の定着 本格的筋機能療法、発音トレーニング

6. 保護者ができる家庭でのサポート

家庭でもできるサポートはたくさんあります。
•食事中はテレビやスマホを切り、姿勢よく食べる習慣づけ
•柔らかすぎない食材(野菜スティックや干し芋など)を取り入れる
•口をしっかり閉じる意識づけ(「おくちチャック」など)
•毎日5分の表情筋エクササイズ
•「あいうべ体操」などの口腔体操
•鼻呼吸を促す就寝時の対策(口テープなど)

7. よくある質問と答え

Q1. 子どものクセだけで“病気”なんですか?

A. 単なるクセと思われがちな口の動きや呼吸も、機能発達の遅れや障害のサインである場合があります。
放置することで発音障害や歯列不正、咀嚼・嚥下障害に進展することがあるため、早期の評価と対応が重要です。

Q2. 治療はどれくらい続ける必要がありますか?

A. 発育と習慣形成には時間がかかるため、3〜6か月、場合によっては1年以上かけて継続的に支援します。
保護者と歯科医療者の連携による二人三脚が成功の鍵です。

Q3. 矯正治療と何が違うのですか?

A. 矯正は“歯を動かす”治療、機能療法は“正しく動かせるようにする”治療です。
両方を併用することで、見た目と機能の両立が図れます。

8. まとめ ― 子どもの将来を守る「お口の教育」

小児口腔機能発達不全症は、見逃されがちですが決して珍しい疾患ではありません。現代の子どもたちにとって、「うまく噛める」「しっかり飲み込める」「はっきり話せる」ことは、健康的な身体・学習能力・社会性を育む土台です。
「ただのクセだろう」「大きくなれば治るだろう」と見過ごさず、お子さんの口元や話し方、食べ方に気になることがあれば、ぜひ歯科医院にご相談ください。私たちはお子さんの成長をお口の面からしっかりとサポートいたします。

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赤ちゃんから12歳までに気をつけたい歯の健康 ― 成長段階に応じたケアと注意点

子どもの歯の健康は、将来の口腔環境だけでなく、全身の健康や生活の質にも大きく影響します。乳歯が生え始める赤ちゃんの時期から、永久歯がそろい始める学童期まで、それぞれの段階に応じたケアや注意点を知っておくことがとても大切です。
このコラムでは、赤ちゃんから12歳くらいまでの子どもの歯の発達や、それぞれの時期に気をつけたいポイント、家庭でのケア方法について詳しく解説します。

【乳児期】生後6か月〜2歳ごろまで:乳歯のはじまり

■ 乳歯の萌出とケアのスタート
赤ちゃんの乳歯は、生後6か月ごろから下の前歯から順に生え始めます。2歳半〜3歳頃には、上下合わせて20本の乳歯がそろいます。この時期は歯が生え始めたばかりで、虫歯になりやすいイメージは少ないかもしれませんが、実は“予防のスタート地点”として非常に重要な時期です。
■ 注意すべきこと
•歯が生えたらすぐに歯磨き習慣を始めましょう。
最初はガーゼなどで拭き取るだけでもOKですが、徐々に乳児用歯ブラシに慣れさせましょう。
•哺乳瓶の使用には注意を。
長時間哺乳瓶でミルクやジュースを飲ませると、「哺乳瓶う蝕」と呼ばれる虫歯の原因になります。就寝中の飲み物は白湯や水がベストです。
•フッ素入り歯みがき剤は少量から。
年齢に応じて適切な量を使い、仕上げ磨きの後にうがいの練習も徐々に始めましょう。

【幼児期】3歳〜5歳ごろ:乳歯がそろい、虫歯リスクが高まる時期

■ 歯みがきの習慣づけと保護者のサポートが鍵
この時期はすべての乳歯が生えそろい、食事の内容も大人に近づいてきます。一方で、自分での歯みがきがまだ不十分なため、保護者の仕上げ磨きがとても重要になります。
■ 注意すべきこと
•仕上げ磨きは小学校入学前まで続けるのが理想。
歯ブラシが届きにくい奥歯や歯と歯の間は特に虫歯になりやすいため、大人の目と手でしっかりケアすることが必要です。
•定期的な歯科検診で虫歯予防を。
虫歯ができやすい時期のため、歯科医院での定期検診やフッ素塗布を受けることで、予防意識を高めることができます。
•間食の与え方にも工夫を。
甘いおやつやジュースをダラダラ摂取すると、虫歯のリスクが高まります。時間を決めて与えることがポイントです。

【学齢期前半】6歳〜8歳ごろ:乳歯と永久歯の“混合歯列期”

■ 生え替わりの時期、トラブルが起こりやすい
この時期は、乳歯が抜けて永久歯に生え替わり始める重要な時期です。特に「6歳臼歯」と呼ばれる奥歯は、乳歯の奥に新しく生えてくるため見落とされやすく、虫歯になりやすい歯のひとつです。
■ 注意すべきこと
•生えたばかりの永久歯は虫歯に弱い。
表面が未成熟で酸に弱く、歯ブラシも届きにくいため、フッ素塗布や歯科医院でのシーラント(奥歯の溝を埋める処置)などが有効です。
•歯並びのチェックも重要に。
乳歯の早期脱落や、指しゃぶり、口呼吸などが原因で歯並びや咬み合わせに悪影響を及ぼすことがあります。必要に応じて矯正歯科での相談も検討しましょう。
•自分で磨けるようサポートを。
6歳ごろからは自立心も育ちますが、まだ磨き残しも多いため、引き続き保護者のチェックや仕上げ磨きが大切です。

【学齢期後半】9歳〜12歳ごろ:永久歯列への移行と自立の時期

■ 歯並びやかみ合わせが完成に近づく
この時期には多くの永久歯が生えそろい、乳歯との交代がほぼ完了します。口腔内は大人に近づいていきますが、成長期ならではの歯列の変化や清掃不良が原因で、トラブルが起きることも少なくありません。
■ 注意すべきこと
•永久歯の虫歯や歯肉炎に注意。
特に奥歯は生えた直後に虫歯になりやすく、歯ぐきの炎症(小児性歯肉炎)も起こりやすいため、歯磨きの精度を高める必要があります。
•矯正のタイミングを見極める。
もし歯並びやかみ合わせに問題がある場合は、この時期に矯正治療を始めることで、歯を抜かずに対応できることもあります。
•生活習慣の見直しも重要。
間食の回数や食事の姿勢、噛む回数なども、歯や顎の発育に関係します。親子でバランスの良い生活習慣を心がけましょう。

年齢にかかわらず大切なこと

● フッ素で歯を強くする
歯科医院での定期的なフッ素塗布に加え、フッ素配合の歯みがき剤を日常的に使用することで、虫歯に強い歯を育てることができます。年齢に応じた濃度・使用量については歯科医に相談すると安心です。
● 歯医者を“こわくない場所”に
子どものうちから定期的に通院していれば、いざ虫歯になったときも恐怖感なく治療を受けることができます。定期検診は「歯を削る場所」ではなく、「歯を守る場所」として慣れさせることが大切です。
● スマイルキッズプログラムでの継続的なサポート
当院では、お子さまの成長に合わせた予防・管理を行うために、「スマイルキッズプログラム」を導入しています。定期検診のたびに、年齢や発育段階に応じて以下のようなサポートを行います:
•歯並びや顎の発達状況のチェック
•仕上げ磨きやセルフケア指導
•食生活や習癖に関するアドバイス
•歯科への慣れと継続的な通院習慣の育成
このように、単に虫歯を「見つける」だけでなく、**「育てる予防」**を意識した包括的なサポートを実施しており、将来的なトラブルの未然防止につなげています。詳しくは当院ホームページ(スマイルキッズプログラムの詳細はこちら)をご覧ください。
● 矯正の専門医(女医)による安心の相談体制
お子さまの歯並びや噛み合わせについて不安を感じた場合もご安心ください。当院には矯正治療を専門とする女性歯科医師が在籍しており、保護者の目線に寄り添った丁寧な診療を行っています。
歯並びのチェックだけでなく、「矯正はいつ始めたらいいの?」「抜歯は必要?」「費用はどのくらい?」といったよくあるお悩みにも、専門的な視点からやさしくご説明します。将来的な矯正治療を検討するうえでも、早期のご相談が重要です。ぜひお気軽にお尋ねください。

おわりに ― 歯の健康は“親子の二人三脚”で守る

子どもの歯の健康は、単に虫歯を防ぐだけでなく、咀嚼力・発音・顔の成長・全身の栄養状態などにも深く関係します。そのため、毎日の歯みがきや食生活の管理、定期的な歯科受診は、将来の健康への大きな投資といえるでしょう。
子ども一人ではまだ十分なケアができないからこそ、保護者の関わりと見守りが何より大切です。そして、歯科医院もそのパートナーとして、子どもの成長段階に応じたアドバイスとサポートを行っています。
乳歯の1本目が生えたときから、永久歯がそろう12歳ごろまで。それぞれのタイミングで、適切なケアと習慣づけをしていくことが、健やかな未来の笑顔につながっていくのです。

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「歯根破折」で抜歯は避けたい!歯の寿命を延ばす「ファイバーコア」という選択

歯の寿命を左右する「歯根破折」と「ファイバーコア」の重要性

歯は人体で最も硬い組織の一つですが、残念ながら永久に持つものではありません。特に、神経を抜いた(根管治療を行った)歯は、もろくなりやすく、さまざまなリスクを抱えることになります。その中でも、歯の寿命を大きく左右する深刻な問題が「歯根破折(しこんはせつ)」です。

歯根破折とは?なぜ神経を抜いた歯に起こりやすいのか

歯根破折とは、歯の根っこの部分にヒビが入ったり、完全に割れてしまったりする状態を指します。歯根破折が起こると、歯周組織との間に隙間が生じ、そこから細菌が侵入して炎症を引き起こします。自覚症状としては、噛むと痛い、歯茎が腫れる、膿が出る、歯がグラグラするといったものがありますが、初期の段階では自覚症状がないことも少なくありません。

神経を抜いた歯が歯根破折を起こしやすい理由はいくつかあります。まず、神経と共に血管も失われるため、歯への栄養供給が途絶え、歯自体が乾燥してもろくなります。例えるなら、生木が乾燥して枯れ木になるようなイメージです。また、根管治療の過程で歯の内部が削られることで、歯の構造が弱くなることも一因です。さらに、歯に大きな力が加わった際、例えば食いしばりや歯ぎしり、硬いものを噛んだ時、あるいは被せ物(クラウン)の土台に金属の芯(メタルコア)を使用した場合などに、その力が歯の根に集中し、破折を引き起こすことがあります。

一度歯根破折が起こってしまうと、多くのケースでその歯を保存することが困難になります。なぜなら、割れた部分を完全に接着して封鎖することが極めて難しく、そこから感染が繰り返し起こるためです。そのため、残念ながら抜歯を余儀なくされる場合がほとんどです。

歯根破折のリスクを低減する「ファイバーコア」

このように、歯の寿命を脅かす歯根破折を防ぐために、現代の歯科医療では様々な工夫が凝らされています。その一つが、根管治療後の被せ物の土台として使用する「ファイバーコア」です。

従来、神経を抜いた歯の土台には、金属製のメタルコアが使用されることが一般的でした。メタルコアは強度が高く、被せ物をしっかりと支えるという利点がありました。しかし、金属は非常に硬いため、歯に強い力が加わった際に、歯よりも硬いメタルコアが「くさび」のように作用し、歯根に無理な力を集中させてしまうことが、歯根破折の一因となることが指摘されてきました。

一方、ファイバーコアは、ガラス繊維強化樹脂を主成分とした土台です。その最大の特長は、天然の歯に近いしなやかさ(弾性)を持っている点にあります。このしなやかさにより、噛む力が歯全体に均等に分散されやすくなり、歯根に集中する応力を緩和することができます。その結果、歯根破折のリスクを大幅に低減することが期待できます。

また、ファイバーコアは金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむ「ブラックマージン」といった審美的な問題も防ぐことができます。さらに、光透過性があるため、オールセラミックなどの透明感のある被せ物と組み合わせることで、より自然で美しい仕上がりを実現することも可能です。

歯の未来を守る選択

歯根破折は、一度起こってしまうと取り返しのつかない事態になることがほとんどです。
ご自身の歯をできるだけ長く健康に保つためにも、根管治療後の土台の選択は非常に重要です。ご不明な点やご不安なことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。私たちは、皆様の大切な歯の未来を共に守るお手伝いをいたします。

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美しさと機能性を両立するセラミック治療 ― メリットと注意点を正しく理解しよう

虫歯治療や審美目的の補綴治療において、近年特に注目されているのが「セラミック治療」です。自然な美しさに加え、金属を使わないことで身体への負担も少なく、長期的に安定した口腔環境が期待できる点が大きな魅力です。
一方で、セラミック治療には保険が適用されないケースが多く、費用面や破損リスクなど、事前に理解しておくべき注意点も存在します。
このコラムでは、セラミック治療がなぜ選ばれているのか、その優れた点とともに、知っておくべきデメリットについてもわかりやすく解説いたします。

セラミック治療とは?

セラミック治療とは、虫歯や欠損歯などの補綴治療において、歯の一部または全体を「セラミック(陶材)」素材で修復する治療法です。主に以下のような補綴物に使用されます。
•インレー(詰め物)
•クラウン(被せ物)
•ラミネートベニア(前歯表面に貼り付けるシェル状の補綴物)
•ブリッジやインプラント上部構造など
セラミックはガラスに似た素材でありながら、耐久性や審美性に優れ、近年では「ジルコニア」や「e.max」といった、さらに高強度なセラミック素材も登場しています。

セラミック治療の優れている点

1. 審美性に優れる ― 自然な白さと透明感
セラミックの最大の特長は、天然歯のような美しい見た目を再現できる点です。色調の調整が細かく可能で、隣接する歯の色や質感に合わせた製作ができます。特に前歯など、見た目が重視される部位では、保険の金属やプラスチック素材と比べて格段に自然な仕上がりになります。
また、セラミックは経年変化による変色がほとんどなく、長期間美しい状態を保てる点も大きな魅力です。
2. 金属アレルギーの心配がない ― メタルフリー素材
保険診療で使用される金属(銀歯など)は、体質によっては金属アレルギーの原因となることがあります。セラミックは金属を一切含まないため、アレルギーの心配がなく、身体にやさしい素材として注目されています。
また、金属を使わないことで、歯ぐきとの境目が黒ずんで見えるような「メタルライン」も生じません。審美的にも清潔感のある仕上がりになります。
3. すぐれた耐久性と生体親和性
高強度なセラミック素材(ジルコニアなど)は、しっかり噛む奥歯にも使用できるほどの耐久性を備えています。また、表面が非常になめらかで汚れが付きにくいため、プラークの蓄積を抑えやすく、虫歯や歯周病の再発防止にもつながります。
さらに、歯ぐきとの適合性が良く、炎症が起こりにくいため、長期的に健康な歯周環境を維持しやすいのも特徴です。
4. 精密な製作が可能 ― 技工士との連携によるオーダーメイド
セラミック治療では、歯科技工士が患者さんの歯型や色調、咬合の状態に合わせて一つひとつ丁寧に補綴物を作製します。最新のCAD/CAM技術や手作業による微調整によって、高い精度とフィット感を実現できます。
こうした細かな仕上げが、装着後の違和感の少なさや、咬み合わせの安定性にもつながっています。
伊皿子おおね歯科医院では、特に色合わせ等の際にはトップクラスの歯科技工士さんに立ち会ってもらっています。
>>トップクラスの歯科技工士による補綴治療
>>歯科治療を支える“もうひとりの専門家” ― 歯科技工士の重要性について

セラミック治療のデメリット・注意点

1. 保険適用外 ― 自費診療になることが多い
セラミック治療は、基本的に**自費診療(保険適用外)**となるため、金属製の保険治療に比べて費用が高額になります。治療費は医院や使用する素材によって異なりますが、インレーで数万円、クラウンで10万円前後かかる場合もあります。
そのため、セラミック治療を検討する際は、見た目や機能性とのバランス、将来的な治療の回数や期間なども踏まえて総合的に判断することが大切です。
2. 強い衝撃で破折することがある
セラミックは金属のようにしなやかな性質ではなく、一定の衝撃には弱いという性質があります。特に歯ぎしりや強い噛みしめの癖がある方は、セラミックの破折リスクが高まります。そのような方には、ナイトガード(マウスピース)の装着を推奨することがあります。
また、治療前に噛み合わせのバランスをしっかり調整することが、トラブル防止の鍵となります。
3. 技術によって仕上がりに差が出ることがある
セラミック治療は、歯科医師の形成技術と、歯科技工士の製作技術の両方が求められる治療です。丁寧な型取り・咬合の記録・色調指示がなければ、どれだけ素材が良くても理想的な補綴物は完成しません。
そのため、経験豊富な歯科医院・技工所と連携しているかどうかが、結果の良し悪しを大きく左右します。治療前にどのような素材・手順で治療が進むのか、丁寧な説明があるかを確認すると安心です。

セラミック治療は「選べる時代」に

一昔前までは、「銀歯=当たり前」という認識が一般的でした。しかし、現在では審美性・健康面を重視して、セラミック治療を希望する方が年々増加しています。さらに、CAD/CAM技術の進歩によって、費用を抑えたセラミック製の保険診療(※条件付き)も一部で導入され始めています。
とはいえ、素材や部位によっては従来の保険適用外となるケースが多いため、自費診療のセラミック治療が依然として主流です。治療を検討する際は、「見た目」「機能」「健康」「費用」など、何を優先するかを明確にし、歯科医師と相談しながら最適な選択を行うことが大切です。

おわりに ― 10年先を見据えた治療を

セラミック治療は、「ただ見た目を良くする」だけでなく、再発のリスクを減らし、口腔内を健康に保ちやすい環境をつくるための選択肢です。もちろん保険診療にも良さはありますが、「より良いものを長く使いたい」という方にとっては、セラミック治療が大きなメリットをもたらしてくれます。
重要なのは、素材だけでなく「誰が・どのように治療を行うか」。納得のいく説明を受けたうえで、ご自身のライフスタイルや価値観に合った治療法を選びましょう。
セラミック治療についてご不明な点やご相談があれば、ぜひお気軽に当院までお声がけください。あなたの笑顔と健康を長く支える、最適な治療をご提案いたします。

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歯科のガムピーリングとは?

ガムピーリングとは、歯ぐき(歯肉)の黒ずみを取り除き、健康的なピンク色に改善する治療です。メラニン色素の沈着により、歯ぐきが黒ずんで見えることがありますが、これは遺伝や喫煙、加齢などが原因で起こります。ガムピーリングでは、レーザーや薬剤を用いて表面の色素を除去し、歯ぐき本来の自然な色を取り戻すことができます。治療は比較的短時間で済み、痛みや腫れも少ないのが特徴です。見た目の印象が大きく変わるため、笑ったときに歯ぐきが見える方や、口元の美しさにこだわりたい方に人気のある審美的な処置です。歯のホワイトニングと併用することで、より明るく健康的な印象を与えることができます。気になる方は一度、歯科医院で相談してみてください。

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気になる「口臭」の正体とその対策 ― 原因・予防法・歯科医院での治療について

人と話していて、「自分の口臭、大丈夫かな」とふと心配になった経験は誰にでもあるのではないでしょうか。口臭は自分では気づきにくく、他人に指摘されにくい分、とてもデリケートな問題です。しかし、原因や対策を正しく知ることで、予防や改善は十分に可能です。このコラムでは、口臭の主な原因と日常でできる予防法、そして歯科医院で行われる具体的な治療について詳しくご紹介します。

口臭の主な原因とは?

口臭には大きく分けて「生理的口臭」と「病的口臭」の2種類があります。
1. 生理的口臭
これは誰にでもある自然な口臭です。例えば、起床直後や空腹時、緊張して唾液の分泌が減ったときに一時的に強くなります。これは口腔内の乾燥により、嫌気性菌が増殖しやすくなるためです。生理的口臭は、飲食や歯磨き、会話などで唾液が分泌されると自然に改善されることが多く、特に心配はいりません。
2. 病的口臭
こちらは、何らかの病気や異常が原因で発生する口臭です。原因として多いのが「口腔内の疾患」です。特に以下のようなものが挙げられます。
•歯周病:歯周病菌が歯周ポケットで繁殖することで硫化水素などの臭気ガスを発生させます。
•虫歯:進行した虫歯では、歯が腐敗し臭いの原因になります。
•舌苔(ぜったい):舌の表面に溜まった汚れ(食べかすや細菌)が原因で臭いが発生することがあります。
•合わない入れ歯や被せ物:清掃不良や細菌の繁殖によって悪臭を伴うことがあります。
•胃が悪い方:胃や腸の調子が悪い場合は食物の消化に時間がかかるため、多くの悪臭成分が発生して強い口臭になってしまいます。
•蓄膿症:副鼻腔に膿がたまり、それが原因で口臭になることがあります。
また、口腔内以外の要因としては、呼吸器や消化器の病気(副鼻腔炎、胃炎など)、糖尿病や肝疾患などの全身的な病気が原因となる場合もあります。

自宅でできる予防法

口臭予防の基本は、口の中を常に清潔に保つことです。以下のポイントを意識することで、日常的に口臭を予防することができます。
1. 正しい歯磨き習慣
1日2〜3回、特に就寝前の丁寧なブラッシングが効果的です。歯と歯の間や歯と歯ぐきの境目など、汚れがたまりやすい部分をしっかり磨くことが大切です。
2. デンタルフロス・歯間ブラシの使用
歯ブラシだけでは落としきれない歯間のプラーク(歯垢)を除去するために、デンタルフロスや歯間ブラシの併用がおすすめです。
3. 舌の清掃
舌の表面には食べかすや細菌がたまりやすく、臭いの原因となることがあります。専用の舌ブラシややわらかい歯ブラシで、優しく舌苔を取り除きましょう。
4. 唾液の分泌を促す
唾液には、口臭の原因菌を洗い流す働きがあります。ガムを噛んだり、水分をこまめに摂取したりすることで唾液の分泌を促しましょう。
5. 食生活の見直し
ニンニクやネギなどの強いにおいを伴う食べ物の摂取は、一時的に口臭を強くすることがあります。また、糖分が多い食事は虫歯や歯周病の原因にもなりやすいため、バランスの取れた食生活を心がけることも大切です。

歯科医院で行われる口臭治療

日常的なケアを行っても口臭が気になる場合は、歯科医院での診断と治療を受けることをおすすめします。以下のような診療を通じて、根本的な原因を突き止め、適切な対処が可能になります。
1. 歯周病・虫歯の治療
歯周病や虫歯が口臭の原因である場合は、それらの治療を優先的に行います。歯石除去や根管治療、被せ物の修復・再作製などが含まれます。
2. プロフェッショナルクリーニング(PMTC)
専用の器具と薬剤を用いて、普段のブラッシングでは取り切れない歯垢や歯石を徹底的に除去します。定期的なPMTCは、口腔内の清潔を保ち、口臭予防にも大きな効果があります。
3. 舌クリーニングの指導
舌苔が原因の場合は、適切な舌の清掃方法を指導してくれることもあります。過度な舌磨きは粘膜を傷つける恐れがあるため、自己流ではなく専門家のアドバイスを受けることが安心です。
4. 生活習慣やセルフケアの見直し
患者様の生活習慣やセルフケアの方法を詳しく聞き取り、改善点を提案するカウンセリングを行う歯科医院も増えています。例えば、ドライマウス対策として保湿ジェルの使用を勧めたり、就寝前のケアの方法を再確認したりします。

おわりに ― 口臭は予防と治療で改善できる

口臭は非常に身近な悩みでありながら、原因や対策がわからずに放置されがちです。しかし、多くの場合、口腔内の清掃状態や疾患に起因しており、正しいセルフケアと歯科医院での適切な治療によって改善が可能です。
気になる場合は、一人で悩まず、まずは歯科医院で相談してみることが第一歩です。口の中を清潔に保つことで、見た目だけでなく、健康や対人関係の自信にもつながります。清潔で快適な口腔環境を維持し、笑顔で過ごせる毎日を目指しましょう。

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食事と歯磨きの正しい関係とは?

私たちが食事をすると、口の中は一時的に酸性に傾きます。この酸性の状態は、歯の表面(エナメル質)を溶かす原因となり、むし歯のリスクを高めます。特に、糖分を含む食べ物や飲み物を頻繁にとると、歯の再石灰化が追いつかず、むし歯が進行しやすくなります。

そこで大切なのが、食後の歯磨きです。ただし、食後すぐの歯磨きは避け、30分ほど時間を置いてから行うのが理想的です。これは、酸性になった直後の歯は柔らかくなっており、すぐに磨くと傷つけてしまう恐れがあるためです。

また、1日3回の歯磨きだけでなく、就寝前は特に丁寧に磨くことをおすすめします。夜間は唾液の分泌が減少し、細菌が繁殖しやすい状態になるからです。

食生活と歯磨きのバランスを意識することで、むし歯や歯周病を防ぐことができます。毎日のちょっとした習慣が、大切な歯を守る鍵となります。

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