白金高輪の歯医者伊皿子おおね歯科医院。白金高輪駅、泉岳寺駅徒歩5分

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子どもの睡眠時無呼吸と歯並びの関係 ― 歯科が果たせる早期介入の役割

はじめに

子どもにも睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea: SAS)があることは、意外に知られていません。 特にアデノイドや扁桃肥大が原因となることが多く、歯科領域との関連も深いのが特徴です。 このコラムでは、小児の睡眠障害と歯並びの関係に焦点を当て、歯科医院でできる早期介入の重要性について解説します。

小児の睡眠時無呼吸とは

小児SASは、睡眠中に気道が閉塞して呼吸が止まる、あるいは著しく低下する状態を繰り返す疾患です。 主な原因はアデノイド(咽頭扁桃)や口蓋扁桃の肥大ですが、顎の成長不足や舌の位置異常、肥満、口呼吸の習慣なども影響します。

見逃されやすい小児SASのサイン

夜間のいびき、呼吸の中断、頻繁な寝返り、日中の眠気、集中力の低下、落ち着きのなさなどが挙げられます。 特に注意したいのは、学習障害や多動傾向の裏に睡眠障害が潜んでいるケースです。

歯並びや顎の発育との関係

小児SASを抱える子どもは、口呼吸や舌の位置異常により、上顎の横幅が狭くなりやすく、開咬や上顎前突、反対咬合などの不正咬合が生じやすくなります。 また、慢性的な口呼吸により、顔貌の成長にも影響が出ることがあります(アデノイド顔貌など)。

歯科でできる早期介入

歯科医院では、口腔内の観察から小児SASの兆候に気づくことができます。 舌の位置、口唇閉鎖、口呼吸の有無、顎の幅、歯列のアーチ形状などから、成長の偏りを早期に察知できます。
必要に応じて耳鼻咽喉科や小児科と連携しながら、口腔筋機能療法(MFT)や拡大床などによる早期矯正を提案することもあります。

小児矯正による気道確保の効果

顎の成長をコントロールする小児矯正は、見た目の歯並びだけでなく、気道を広げる効果も期待されます。 特に上顎の横幅を広げることで、鼻腔や咽頭部のスペースが確保され、呼吸がしやすくなることがあります。

家庭でできるセルフチェックと対策

お子さまの睡眠中に以下の点をチェックしてみてください:

– いびきをかいていないか
– 口を開けたまま寝ていないか
– 寝相が極端に悪くないか
– 日中、集中力が続かない様子がないか

これらに当てはまる場合は、歯科医院への相談をおすすめします。

まとめ

子どもの睡眠は、成長や学習、情緒の安定にとって極めて重要です。 歯科では、単に歯を整えるだけでなく、お子さまの全身的な健康を支える役割も担っています。 小さなサインに早く気づくことで、将来的な心身のトラブルを予防できる可能性があります。 気になる症状があれば、ぜひ早めに歯科医院へご相談ください。

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口腔ケアと一緒に“鼻うがい”も ― 高齢者の誤嚥予防と感染対策

【はじめに】

高齢化が進む日本では、誤嚥性肺炎やインフルエンザ、新型コロナウイルスなど、呼吸器感染症による入院・死亡が深刻な問題となっています。これらの疾患には、「口や鼻の衛生状態」が深く関係していることが分かっています。
口腔ケアの重要性は徐々に広まっていますが、鼻のケア=鼻うがいに関しては、まだ一般的とは言えません。
しかし近年、鼻うがいは呼吸器感染予防や口腔疾患予防にも有効なセルフケアとして、医療現場で注目されています。
このコラムでは、鼻うがいが高齢者の健康にどのようなメリットをもたらすのか、また歯科の視点から見た活用方法について詳しくご紹介します。

【高齢者における誤嚥のリスクとは】

加齢とともに、咀嚼や嚥下などの機能は徐々に衰えていきます。舌や口周囲の筋力低下により、食べ物や唾液が気道へ誤って入り込む=誤嚥が起こりやすくなります。
誤嚥が続くと、気道に入った細菌が肺に達し、「誤嚥性肺炎」を引き起こします。実際に肺炎による死亡者の多くが高齢者であり、その多くが誤嚥と関係しています。
さらに、口腔内には数百種類もの細菌が存在し、歯垢や舌苔を介して容易に増殖します。これらの細菌が誤嚥によって気道に入り込むことで、感染のリスクが高まります。

【鼻うがいが果たす役割】

鼻うがいとは、塩分を含んだぬるま湯で鼻腔内を洗い流すセルフケアです。鼻の奥には、ウイルスや細菌、アレルゲン、ほこりなどが溜まりやすく、感染の入り口となりがちです。
鼻うがいを行うことで、以下のような効果が期待されます。
•ウイルスや細菌の物理的除去による感染症予防
•鼻づまりの改善による口呼吸の防止
•上咽頭部の清浄化による免疫機能の安定
特に口呼吸は、口腔内を乾燥させ、細菌の増殖や虫歯・歯周病のリスクを高めるため、鼻呼吸の確保は非常に重要です。

【鼻うがいと口腔ケアの相乗効果】

口腔ケアで口内の細菌を減らし、鼻うがいで鼻腔に潜むウイルスや異物を洗い流すことで、感染のリスクを二重に抑えることができます。
さらに、鼻呼吸が安定すれば舌の位置が正しく保たれ、嚥下機能が改善されやすくなります。
これは、誤嚥性肺炎や口腔機能低下症の予防にもつながります。
つまり、口と鼻をセットでケアすることが、全身の健康維持につながるのです。

【具体的な鼻うがいの方法】

市販の専用ボトルや洗浄器を使用することで、誰でも安全に鼻うがいが行えます。以下は基本的な手順です。

1.約0.9%の塩分濃度(生理食塩水)を約36〜37度のぬるま湯で準備
2.専用ボトルに液を入れる
3.洗面台の前で口で息をしながら、片方の鼻からゆっくり注水
4.反対側の鼻または口から流れ出すよう姿勢を調整
5.左右を交互に行い、最後に軽く鼻をかむ

ポイントは、ゆっくり・優しく・無理をせず。
高齢者には付き添いや初回指導があると安心です。

【歯科医院での取り組み】

当院では、口腔ケアの一環として「鼻うがい」の導入も推奨しています。
特に以下のような方には、鼻うがいの実施を勧めています。
•過去に誤嚥性肺炎を経験した方
•季節ごとに風邪やインフルエンザにかかりやすい方
•鼻呼吸がうまくできない方(鼻炎・副鼻腔炎の方など)
歯科の定期検診では、お口の中だけでなく呼吸の状態や習癖も確認します。必要があれば、耳鼻科との連携を取りながら、より包括的な予防策をご提案いたします。

【よくある質問 Q&A】

Q:鼻うがいって痛くないですか?

A:正しい濃度の塩水を使えばほとんど痛くありません。水道水や真水は鼻がツンとするので避けてください。

Q:毎日やらないといけませんか?

A:毎日が理想ですが、花粉や風邪が気になる季節だけでも効果があります。無理せず続けることが大切です。

Q:耳に水が入りそうで怖いのですが?

A:正しい方法でゆっくり行えば問題ありません。不安な方は医師や歯科医に相談しましょう。

【まとめ】

誤嚥性肺炎や風邪など、呼吸器の感染症は高齢者の生活の質を大きく左右します。
口腔ケアと同時に、鼻うがいという新しいセルフケアを取り入れることで、感染リスクを大きく減らすことができます。
これからの時代、「歯を磨く・舌をきれいにする・鼻を洗う」という3つの習慣が、高齢者の健康を支える基本となるかもしれません。
当院では、患者さま一人ひとりに合わせた口腔・呼吸ケアをサポートしています。お気軽にご相談ください。

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白金高輪の小児歯科が教える:赤ちゃんから就学までに気をつけたい歯と口の健康ガイド

はじめに

白金高輪で小児歯科をお探しの方へ。赤ちゃんの頃からの口腔ケアは、健康な永久歯や正しい歯並びの土台となります。本コラムでは、0歳から小学校入学までのお子さまの口腔発育と歯の健康について、年齢ごとの注意点を中心にご紹介します。

0歳:歯が生える前からスタートするお口の健康づくり

まだ歯が生えていない赤ちゃんでも、ガーゼや清潔な指を使って口の中を優しく拭いてあげることで、菌の繁殖を防ぎます。また、授乳後のケアや口呼吸の予防も重要です。

1〜2歳:乳歯の萌出と食生活のスタート

この時期には前歯から奥歯へと順番に乳歯が生えはじめます。甘い飲み物や間食の頻度には注意が必要で、虫歯予防のためにフッ素塗布も検討しましょう。歯磨きは親御さんが仕上げ磨きを行い、歯ブラシに慣れさせることが大切です。

3〜4歳:乳歯列の完成と口腔習癖のチェック

指しゃぶり、口呼吸、舌突出癖などの習癖が歯並びに影響する時期です。伊皿子おおね歯科医院では、こうした口腔習癖を早期に発見し、必要に応じてトレーニングを行います。

5〜6歳:永久歯への準備期間

第一大臼歯(6歳臼歯)の萌出が始まる大切な時期です。乳歯の虫歯は永久歯にも悪影響を与えるため、日々のケアと定期的な検診が欠かせません。お子さまの自立心が芽生える時期でもあるため、歯磨き指導を丁寧に行うことが求められます。

小児歯科でできること

伊皿子おおね歯科医院では、お子さまの年齢や発達段階に応じた歯科検診、フッ素塗布、口腔機能トレーニングなどを行っています。「虫歯ゼロ」だけでなく、「噛む・話す・飲み込む」といった機能面の健全な発達も支援しています。

保護者の皆さまへ:家庭でできる口腔ケアのポイント

・仕上げ磨きは小学校低学年までを目安に続けましょう
・水やお茶で口をゆすぐ習慣をつけましょう
・間食の時間と内容を見直しましょう
・口呼吸ではなく鼻呼吸ができているか観察しましょう
これらはご家庭でもすぐに実践できる習慣です。

当院の特徴:スマイルキッズプログラムと矯正専門医による安心の体制

伊皿子おおね歯科医院では、乳幼児からのお口の健康づくりをサポートするために「スマイルキッズプログラム」を導入しています。このプログラムでは、お子さまの成長に応じて、定期検診ごとに歯並びのチェックや口腔衛生指導を行い、虫歯の予防はもちろん、将来的な不正咬合の早期発見にもつながります。

また、当院には女性の矯正歯科専門医が在籍しており、お子さまや保護者の方が安心してご相談いただける環境を整えています。成長期に合わせた最適なタイミングでの矯正治療をご提案できることも、当院の大きな強みです。

まとめ

乳幼児期からの正しい口腔ケアは、将来のお口の健康だけでなく、全身の発育や学習能力にも良い影響を与えます。白金高輪エリアで信頼できる小児歯科をお探しの方は、ぜひ当院へご相談ください。お子さま一人ひとりに合ったケアとサポートをご提供いたします。

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「乳歯が抜けない…?」そのまま放置していませんか? ― 乳歯晩期残存のリスクと歯科的対応

「もう中学生になるのに、まだ乳歯が残っている」
「下の永久歯が生えてきているのに、乳歯が抜ける気配がない」
そんなご相談を歯科医院では少なからず受けます。このような状態は「乳歯晩期残存(にゅうしばんきざんぞん)」と呼ばれ、子どもの歯の発育において注意すべき現象のひとつです。
永久歯の萌出時期には個人差がありますが、予定の時期を大きく過ぎても乳歯が残存している場合には、歯列不正・噛み合わせ異常・永久歯の異常萌出など、将来の口腔環境に大きな影響を及ぼすことがあります。
本コラムでは、乳歯晩期残存の原因やリスク、歯科医院での対応、そして保護者が日常生活の中で気付くべきサインまで、詳しくご紹介します。

第1章:乳歯晩期残存とは?

■ 1-1. 乳歯の通常の生え替わりとは

乳歯は全部で20本あり、生後6ヶ月頃から生え始め、3歳頃までに生えそろいます。これらは6〜12歳頃にかけて順次抜け、永久歯へと生え替わります。永久歯は親知らずを除き28本あり、歯の生え替わりは以下のような流れで進行します。

永久歯の種類 萌出時期の目安
第一大臼歯(6歳臼歯) 6歳ごろ
中切歯(前歯) 6〜7歳
側切歯 7〜8歳
犬歯・第一小臼歯 9〜11歳
第二小臼歯 10〜12歳
第二大臼歯 12歳前後

■ 1-2. 晩期残存とは?

この生え替わりの時期を大幅に過ぎても乳歯が抜けずに残っている状態を、「乳歯晩期残存」といいます。具体的には、12歳以降になっても乳歯が口腔内に残っている場合、歯科的には晩期残存の疑いとして精査対象となります。
必ずしも病的とは限りませんが、**永久歯が正常に生えてこられない「萌出異常」や「埋伏(まいふく)」**の原因となることがあるため、注意が必要です。

第2章:乳歯晩期残存の原因

乳歯が長く残る背景には、以下のようなさまざまな原因があります。

■ 2-1. 永久歯の欠如(先天性欠如)

もっとも多い原因がこれです。永久歯の「種」がもともと存在しない場合、当然ながら生え替わる相手がいないため、乳歯が抜けずに長く残ります。日本人では第二小臼歯・側切歯に先天欠如が多く見られます。
近年では10人に1人以上の割合で、1本以上の先天性欠如が報告されています(厚労省調査より)。

■ 2-2. 永久歯の萌出異常・方向異常

永久歯が本来の位置に向かって正しく萌出してこない場合、乳歯が刺激を受けず、自然に抜けるきっかけを失ってしまいます。特に犬歯や小臼歯は、斜め方向や歯列外から生えることも多く、注意が必要です。

■ 2-3. 歯列のスペース不足

顎が小さく、歯が並ぶスペースが足りない場合、永久歯が萌出できず、乳歯がそのまま残ってしまうことがあります。

■ 2-4. 歯根吸収の遅れ

通常、乳歯の根は永久歯の圧力によって徐々に吸収され、やがて抜け落ちます。しかし、永久歯の位置や向きの問題でその刺激が弱いと、乳歯の根が吸収されずに長く残ることがあります。

■ 2-5. その他の要因

•早期の乳歯喪失 → 萌出誘導の失敗
•過剰歯 → 永久歯の通り道を塞ぐ
•嚢胞・腫瘍 → 萌出障害の原因となる

第3章:晩期残存が引き起こすリスク

■ 3-1. 歯列不正・咬合異常

乳歯が長く残っていると、永久歯が正しい位置に並ぶことができず、歯列不正(叢生・八重歯・交叉咬合など)や咬み合わせのズレを招くことがあります。

■ 3-2. 萌出困難・埋伏歯

永久歯が骨の中に埋まったまま出てこない「埋伏歯」になることもあります。とくに上顎犬歯の埋伏は多く、外科的介入や矯正治療が必要となるケースがあります。

■ 3-3. 永久歯の位置異常

乳歯が抜けずに放置されていると、永久歯が**異常な位置(歯列外・口蓋側など)**に萌出し、見た目・機能ともに悪影響を及ぼします。

■ 3-4. 咀嚼・発音機能の低下

歯列の乱れは、噛み合わせの不安定さにつながり、食事の咀嚼効率や発音明瞭度に影響を与えることがあります。

第4章:家庭で気付けるサインとは?

乳歯晩期残存は、早期に気付いて歯科で対応すれば、リスクを最小限に抑えられます。以下のようなサインを見逃さないことが重要です。

■ 保護者がチェックすべきポイント

•同じ学年の友達に比べて、歯の生え替わりが遅い
•12歳を過ぎても乳歯が残っている
•歯が二重に生えている(乳歯と永久歯が同時にある)
•前歯や犬歯がなかなか生えてこない
•歯並びが乱れてきた
•食べ物を片側で噛む・噛みにくそうにしている

■ 乳歯と永久歯の見分け方

乳歯はやや白く小ぶりで、形も丸みを帯びています。一方、永久歯は灰白色でしっかりした形状です。位置や歯種にもよりますが、不安な場合は早めに歯科でレントゲン検査を受けることをおすすめします。

第5章:歯科医院での対応

■ 5-1. 精密検査(パノラマ・CT)

まずはレントゲン撮影によって、永久歯の有無、位置、方向を確認します。特に先天欠如・埋伏歯・過剰歯の有無を診断することが重要です。

■ 5-2. 残存乳歯の抜歯

永久歯が存在し、適切な位置にある場合は、残っている乳歯を抜歯することで、自然な萌出を促します。

■ 5-3. 萌出誘導(牽引処置)

永久歯が埋伏している場合、外科的に露出させ、矯正装置で引っ張り出す処置が行われることもあります。これは矯正歯科医との連携が必要です。

■ 5-4. 永久歯が存在しない場合の対応

永久歯の欠如が判明した場合、残存乳歯を長期維持するか、矯正・補綴(インプラント・ブリッジ)を視野に入れて歯列全体を計画的に整えることが検討されます。

第6章:予防と定期検診の重要性

■ 乳歯が抜けない=問題、ではありません

成長のペースには個人差があります。しかし、「永久歯があるのかどうか」「生える準備ができているのか」はレントゲンでしか判断できません。

■ 定期検診を通じての早期発見

6歳臼歯が生えるころから、年2〜3回の定期検診を受けることで、萌出異常を早期に発見し、適切なタイミングで介入することが可能です。

まとめ:乳歯の「居残り」は、将来の歯並びの警告信号かもしれません

乳歯晩期残存は、見た目ではわかりにくい場合もありますが、歯列全体のバランスや咬合発育に大きな影響を及ぼすことがある重要なサインです。永久歯の生え替わりは「自然に任せればいい」と思われがちですが、時に歯科的な介入が必要になることもあります。
「乳歯がなかなか抜けない」「生え替わりが遅れているかも」と気になったら、どうかお気軽にご相談ください。当院では、成長発育に応じた適切な診断と対応を行い、お子さまの健やかな口腔発達を全力でサポートいたします。

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閉塞性睡眠時無呼吸と歯科治療 ― 静かな“いびき”の影に潜む健康リスクとその対策

「いびきがうるさい」「夜中に息が止まっている」と家族に言われたことはありませんか?それは、単なるいびきではなく「睡眠時無呼吸症候群」の可能性があります。中でも、もっとも多いタイプが「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)」です。
この疾患は、睡眠中に気道がふさがれることによって呼吸が止まる(あるいは著しく弱まる)状態を繰り返す病気であり、全身の健康にさまざまな悪影響を及ぼします。
実はこのOSA、医科の分野だけでなく「歯科」でも治療の一端を担うことができることをご存じでしょうか。本コラムでは、OSAの基本的な知識から、歯科的アプローチの有効性、治療の流れ、そして患者さんの疑問への回答までを詳しくご紹介します。

1. 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)とは

■ 睡眠中の「無呼吸」がもたらす深刻な健康被害

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(Obstructive Sleep Apnea:OSA)とは、睡眠中に気道が物理的にふさがれ、10秒以上の呼吸停止(無呼吸)が1時間あたり5回以上生じる状態をいいます。重症度は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)で分類されます。

•軽症:AHI 5~15
•中等症:AHI 15~30
•重症:AHI 30以上

これらの呼吸停止は、身体に以下のような悪影響をもたらします。

•睡眠の質の低下(熟睡できない)
•日中の強い眠気、集中力の低下
•高血圧、糖尿病、心不全、脳卒中のリスク増加
•交通事故や労働災害のリスク上昇
•性機能の低下やうつ症状の併発

とくに中高年男性に多い病気ですが、女性や子どもにも見られることがあり、近年ではその早期発見・早期治療の重要性が強く認識されるようになっています。

2. OSAの原因と発症メカニズム

OSAの主な原因は「上気道の閉塞」です。具体的には、以下のような要因が挙げられます。

■ 解剖学的な原因

•扁桃肥大
•舌が大きい(舌根沈下)
•下顎が小さい・後退している
•肥満による首周りの脂肪沈着
•鼻づまり(鼻中隔弯曲、アレルギー性鼻炎など)

■ 筋力の低下・加齢

睡眠中は全身の筋肉が緩むため、気道を支えている筋肉も緩みます。とくに仰向け寝では、舌が喉の奥に落ち込みやすく、気道をふさぐ原因となります。

3. OSAの治療法にはどんなものがあるのか

OSAの治療には、医科と歯科の連携による複数のアプローチが存在します。

【医科領域での治療】

● CPAP療法(経鼻的持続陽圧呼吸療法)
もっとも一般的な治療法で、マスクをつけて空気を送り込み、気道を強制的に広げる方法です。中等症〜重症の患者に適応されます。
● 減量指導・生活習慣の改善
肥満が関与している場合は、体重を減らすことが大きな改善につながります。
● 外科的治療(鼻中隔矯正、扁桃摘出、顎矯正など)
解剖学的な閉塞の程度が重い場合に検討されます。

4. 歯科でできるOSA治療:スリープスプリント(口腔内装置)

歯科領域でのOSA治療として注目されているのが「口腔内装置(Oral Appliance:OA)」を使ったスリープスプリント療法です。
この装置は、下顎を前方に固定するマウスピース型の装具で、睡眠中に気道が閉塞しないよう、下顎と舌の位置を前に引き出し、気道を広げる役割を果たします。

5. スリープスプリントの仕組みと効果

■ 構造と使用方法

スリープスプリントは、上下の歯列にフィットする透明または半透明のレジン製の装置で、装着時に下顎がわずかに前方に固定される設計となっています。
患者さんの顎や歯列に合わせたオーダーメイド製作のため、違和感が少なく、無理なく使用できるように調整されます。

■ 効果が期待できるケース

•軽度〜中等度のOSAの方
•CPAPに抵抗がある、または使えない方
•出張や旅行が多く、携帯性を重視したい方
•鼻呼吸が可能で、重度の鼻づまりがない方

実際に、軽度〜中等度の患者においては、睡眠時の無呼吸・低呼吸の回数が大きく減少し、日中の眠気やいびきが改善されたという報告が多数あります。

6. スリープスプリント製作の流れ

歯科医院でのスリープスプリント製作は、以下のようなステップで進行します。

【ステップ1】 医科での診断(紹介状が必要)

まず、耳鼻科や睡眠外来で睡眠検査(PSG:終夜睡眠ポリグラフ検査)を受け、OSAの診断を受けます。その結果とともに、口腔内装置の適応があると判断された場合、歯科医院に紹介状が送られます。

【ステップ2】 歯科での口腔内検査と型取り

歯の状態、顎関節の可動域、歯周病の有無などをチェックした上で、上下顎の歯型を採取し、スリープスプリントを製作します。

【ステップ3】 装着・フィッティング

完成後に装着し、違和感がないか、下顎の前方位が適切かを確認・調整します。

【ステップ4】 定期的なフォローアップ

装置使用中は、数週間〜数か月後に再検査を行い、AHIの改善度や装着感を評価します。必要に応じて再調整も行います。

7. 歯科での治療に関するQ&A

Q1. 保険は使えるの?

A. 条件を満たせば保険適用可能です。
医科でOSAと診断され、スリープスプリントの適応とされた場合は、健康保険での作製が可能です。必要書類(診断書や紹介状)を持参してください。

Q2. 違和感はありませんか?

A. 初期は多少の違和感がありますが、多くの方が数日で慣れます。
下顎がやや前に出されるため、最初の数日は顎関節や歯に軽い緊張を感じることがあります。装置の調整や使用時間のコントロールで、スムーズに慣れることが可能です。

Q3. 装置を毎晩使わないとダメですか?

A. 基本的には毎晩の使用が推奨されます。
効果を持続させるためには、継続的な使用が必要です。ただし、旅行や短時間の仮眠時など、状況に応じた活用も可能です。

Q4. 歯が少なくても作れますか?

A. 状況によっては難しいこともありますが、部分入れ歯の併用などで対応可能な場合もあります。
口腔内の状態に応じて設計を調整することができますので、まずはご相談ください。

8. 医科との連携が鍵

睡眠時無呼吸は歯科だけで完結する治療ではありません。スリープスプリントを有効かつ安全に使うためには、耳鼻咽喉科や内科などの医師との密な連携が不可欠です。
また、歯科治療の副次的な効果として、スリープスプリントの使用中に発見される「顎関節症」や「歯ぎしり」「口腔乾燥症」といった別の問題も、適切に管理・治療することが重要です。

9. 睡眠は「歯科」でも支えられる

これまで、「いびき=ただの騒音」と思われていたものが、実は命に関わる重大な疾患のサインであることが分かってきました。そしてその治療には、医科と歯科が手を取り合い、総合的にケアしていくことが求められています。
スリープスプリントによる治療は、患者さんにとって比較的負担が少なく、継続しやすい選択肢のひとつです。毎日の眠りの質を高めることは、人生そのものの質を高めることにつながります。

まとめ ― 深い眠りは、健康な歯と顎から

「日中どうも眠い」「いびきが気になる」「夜中に何度も目が覚める」――その症状、もしかすると閉塞性睡眠時無呼吸が原因かもしれません。
当院では、医科からの紹介をもとに、患者様一人ひとりに合わせたスリープスプリントを製作し、睡眠の質と全身の健康改善をサポートしております。いびきや眠気でお悩みの方は、まずはお気軽にご相談ください。
静かな眠りと、健康な毎日を、私たちと一緒に取り戻しましょう。

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歯科治療と“鼻うがい”の意外な関係 ― 口腔の健康を支えるもうひとつのセルフケア

「鼻うがい」と聞くと、風邪予防や花粉症対策など、耳鼻科領域のセルフケアというイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし実は、この鼻うがいが、歯科の治療や予防においても一定のメリットを持っていることをご存じでしょうか。
本コラムでは、鼻うがいとは何かという基本的な解説から始まり、正しい方法、歯科領域での有用性、さらには「鼻うがいって痛くないの?」「本当に効果があるの?」といった患者さんの素朴な疑問にまで、丁寧にお答えしていきます。

1. そもそも「鼻うがい」とは?

鼻うがいとは、生理食塩水などの洗浄液を使って、鼻の中(鼻腔)や副鼻腔に付着したウイルス・細菌・花粉・ほこりなどを洗い流すセルフケア方法のことです。医学的には「鼻腔洗浄(nasal irrigation)」や「鼻洗浄」とも呼ばれます。
鼻の奥と喉(上咽頭)はつながっており、そこに付着した異物が原因で炎症や感染症が起こることがあります。鼻うがいはこの部分を清潔に保つことで、風邪や副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎の予防や症状軽減に役立ちます。

2. 鼻うがいの具体的なやり方

鼻うがいにはいくつかの方法がありますが、一般的な家庭向けには市販の専用キットや器具を使ったものが安全で簡単です。以下に、基本的な手順を紹介します。

【必要なもの】

•市販の鼻うがいキット(洗浄ボトルと洗浄液パウダー付き)
•または、自作の生理食塩水(0.9%の濃度:500mlのぬるま湯に食塩4.5g)

【手順】

1.洗浄液を準備する
人肌程度(35〜37℃)に温めた食塩水を使います。冷たい水や濃度が適切でない水は、刺激や痛みの原因となります。
2.前かがみで頭を傾ける
洗面所で少し前屈みになり、顔を斜めに傾けて、片方の鼻の穴が上になるようにします。
3.洗浄液を鼻に注ぐ
上側の鼻の穴からゆっくりと洗浄液を注ぎます。液体は反対側の鼻の穴、または口から自然に流れ出ます。
4.逆側も同じように洗浄
左右の鼻を交互に洗いましょう。
5.軽く鼻をかむ
強くかまず、残った液体を静かに排出します。
6.洗浄器具を洗浄・乾燥させる
細菌繁殖を防ぐため、毎回きちんと清掃しましょう。
※医療機関や薬局では、初心者でも使いやすいキットが多く販売されています。

3. 鼻うがいと歯科治療の関係とは?

一見、鼻と歯は別の領域に思えますが、実は密接に関連しています。鼻うがいが歯科の治療や予防に良い影響をもたらす理由を、以下に分かりやすくご説明します。

■ 1. 上顎洞と歯の根の位置関係

上顎の奥歯(特に6番、7番、8番)は、上顎洞と呼ばれる副鼻腔に非常に近接しています。時に歯の根が上顎洞内に突き出していることもあるため、鼻や副鼻腔の炎症(副鼻腔炎)は、歯の痛みや違和感の原因となることがあります。
また、歯の根の先にできた炎症(根尖病変)が副鼻腔炎を引き起こすこともあり、これを「歯性上顎洞炎」と呼びます。鼻うがいは、こうした上顎洞の清潔維持に役立つため、歯科治療と密接な関係を持ちます。

■ 2. 口呼吸の改善による歯周環境の向上

鼻づまりや慢性的な鼻炎を抱えていると、無意識のうちに口呼吸になりがちです。口呼吸は唾液の自浄作用を妨げ、口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯・歯周病・口臭の原因になります。
鼻うがいにより鼻の通りが良くなると、自然な鼻呼吸がしやすくなり、口腔内の湿潤環境が保たれることで、歯周組織の健康を維持しやすくなります。

■ 3. 歯科治療後のトラブル予防

上顎洞に近い部位で抜歯やインプラントなどの外科処置を行った後、細菌感染による副鼻腔炎を予防する目的で鼻うがいを勧めるケースがあります。特に、術後の違和感や鼻の奥の圧迫感がある際には、鼻うがいによって鼻腔内を清潔に保つことが推奨されることもあります。

4. 鼻うがいに関するよくある質問と答え

Q1. 鼻うがいって痛くないの?

A. 正しい方法と適切な濃度で行えば、基本的に痛みはありません。
鼻に水を入れる=ツンとしそう…とイメージされがちですが、それは水道水や真水を使用した場合です。生理食塩水(0.9%)は体液とほぼ同じ濃度なので、鼻の粘膜への刺激が少なく、むしろスッキリとした感覚を得られます。冷たい水や塩分濃度の間違いがあると痛みを感じやすくなるため、使用方法を守ることが大切です。

Q2. 毎日やってもいいの?

A. 1日1〜2回までが目安です。やりすぎには注意が必要です。
過度な鼻うがいは、鼻の粘膜や常在菌のバランスを崩す可能性があります。毎日の予防ケアとしては1日1回、花粉の多い日や風邪をひいたときなどは朝晩2回に増やす程度が推奨されます。

Q3. 子どもでもできるの?

A. 小学生以上であれば可能ですが、無理のない範囲で行いましょう。
子ども用の鼻うがい器具や洗浄液も販売されています。ただし、本人の意思や理解がないまま行うと嫌がることも多いため、耳鼻科医や小児科医の指導のもとで取り入れると安心です。

Q4. 風邪や歯の痛みがあるときでもして大丈夫?

A. 鼻炎や風邪の初期には有効です。歯の痛みがあるときは原因次第です。
風邪や鼻づまりの初期であれば、鼻うがいは効果的です。ただし、強い炎症や膿がある場合には医師の診察を優先してください。
また、歯の痛みが副鼻腔炎と関係している場合は、鼻うがいが症状軽減に寄与することもありますが、自己判断ではなく、歯科医院での診断を受けた上で行うようにしましょう。

5. 鼻うがいを取り入れるときのポイント

鼻うがいは万能ではありませんが、正しく取り入れれば、日常の口腔ケア・全身の健康維持に大きく役立つセルフケア手段です。

● 鼻づまりがあるときは無理に行わない

強く圧をかけて液体を流し込むと、耳に液が入る恐れがあるため、鼻の通りが悪いときは無理せず様子を見ましょう。

● 毎日のルーティンとして無理なく続ける

「歯磨きの後に鼻うがいをする」など、生活の中に組み込むと続けやすくなります。

● 医師のアドバイスを活用する

副鼻腔炎の持病がある方や、上顎洞に問題のある歯科治療を受けた方は、耳鼻科・歯科医師の指導のもとでの使用が安全です。

6. 歯科医院で鼻うがいを勧めるケースとは?

すべての患者さんに対して鼻うがいを推奨するわけではありませんが、以下のような場合においては、歯科医師が鼻うがいを提案することがあります。
•上顎の奥歯の治療後(特に抜歯・インプラントなど)
•口呼吸が強く、歯周病が進行しやすい患者さん
•鼻腔〜副鼻腔に炎症を繰り返す患者さん(歯性上顎洞炎のリスクがある場合)
•全身疾患により感染予防が特に重要な患者さん(糖尿病など)
患者さんの状態や生活習慣に応じて、口腔ケアの延長線上として、鼻うがいという選択肢を提案するのです。

まとめ ― 鼻と歯はつながっている。鼻うがいは“口腔環境”を守るケアのひとつ

鼻うがいは、風邪や花粉症対策だけでなく、歯科領域でも意外な活躍を見せるセルフケアのひとつです。上顎洞と歯の位置関係、口呼吸の予防、術後の感染リスクの軽減など、歯科治療をより快適かつ安全に進めるための補助手段として、活用する価値があります。
「鼻うがいなんて自分には関係ない」と思っていた方も、ぜひ一度、歯や口の健康という視点から見直してみてください。
当院でも、必要に応じて鼻うがいを含む全身的なケアのアドバイスを行っております。ご不明な点や興味のある方は、お気軽にご相談ください。

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口唇閉鎖不全症(ポカン口)とは ― お口が閉じられない子どもたちと向き合うために

「いつもお口がぽかんと開いている」「気がつくと口呼吸をしている」「寝ている間も口を開けている」――そんな様子が気になる子どもはいませんか?
こうした状態が慢性的に続く場合、それは「口唇閉鎖不全症(こうしんへいさふぜんしょう)」という、成長発達の過程で起こる機能的な障害である可能性があります。
本コラムでは、近年増加傾向にあるこの「口唇閉鎖不全症」について、定義・原因・リスク・治療法を医学的・歯科的な観点から包括的に解説します。特に、幼児期から学童期にかけての子どもたちの成長に重要なテーマとして、保護者・教育者・医療従事者の皆様に知っておいていただきたい内容をまとめました。

第1章:口唇閉鎖不全症(ポカン口)とは?

■ 1-1. どんな状態を指すのか

口唇閉鎖不全症とは、安静時や睡眠時において、上下の唇が自然に閉じられていない状態が慢性的に続いていることを指します。俗に「ポカン口」「お口ポカン」とも呼ばれ、見た目の特徴が明らかであるため、保護者の方からも気づかれやすい傾向にあります。
以下のような状態が見られたら、注意が必要です:
•無意識のうちに口が開いている
•鼻呼吸がうまくできない、もしくは常に口呼吸
•食事中に口を開けたまま噛んでいる
•発音がはっきりしない、話し方がぼんやりしている
•唇が乾燥している、口内炎ができやすい

■ 1-2. なぜ問題になるのか

「口が開いているだけで病気なの?」と思われるかもしれませんが、この状態が慢性化すると、歯列不正・口腔機能の発達遅延・免疫低下・姿勢の歪みなど、身体全体に悪影響を及ぼすことがわかってきています。
子どもの発達段階において、お口を正しく閉じて呼吸するという習慣は、顔貌の成長、顎の発育、正しい舌の位置づけ、咀嚼・嚥下・構音機能の形成などに大きく関与しています。つまり、単なる「見た目の癖」ではなく、「将来的な健康や生活の質に直結する問題」なのです。

第2章:口唇閉鎖不全症の原因

口唇閉鎖不全症は、さまざまな要因が絡み合って発症する「多因子性」の問題です。主な原因を下記に分類して解説します。

■ 2-1. 解剖学的要因(構造的な問題)

•上顎前突(出っ歯):前歯が突き出していることで、唇が閉じづらくなる
•下顎劣成長:下顎が小さい・奥まっていると舌が奥に落ちやすくなる
•短い上唇・厚い舌・舌小帯異常:舌や唇の形状の問題で閉鎖力が不足

■ 2-2. 習慣的要因(行動や生活環境)

•口呼吸の習慣化:アレルギー性鼻炎・鼻中隔弯曲などで鼻が通りにくい
•指しゃぶり・おしゃぶりの長期使用:口周りの筋肉の発達を妨げる
•食生活の変化:柔らかい食事により咀嚼力・筋肉が育たない
•スマホやゲームの長時間使用:前かがみ姿勢による顎・舌の筋力低下

■ 2-3. 心理的・社会的要因

•無表情・感情表出の乏しさ:唇や表情筋が使われず機能低下する
•学習環境の変化:コロナ禍によるマスク生活やコミュニケーションの減少も一因とされています

第3章:口唇閉鎖不全がもたらすリスク

口が閉じられない状態は、見た目以上にさまざまなリスクを内在しています。以下に、代表的な問題を挙げます。

■ 3-1. 歯並び・噛み合わせへの影響

•唇が閉じられないことで舌が前方に出る癖(舌癖)が固定され、上顎前突・開咬・過蓋咬合などの不正咬合が進行します。
•唇の筋力が不足していると、歯の内外からのバランスが崩れ、歯列弓の発育が阻害されます。

■ 3-2. 口腔機能の発達障害

•嚥下(飲み込み)の際に正しい舌の動きができない
•咀嚼機能が未発達で、消化器官への負担が増す
•発音が不明瞭(特にサ行・タ行など)で、言語発達に影響する

■ 3-3. 呼吸機能・免疫への悪影響

•鼻呼吸ができないため、口腔内が乾燥しやすくなり、虫歯・歯肉炎・口臭の原因に
•ウイルスや細菌が直接喉に届きやすく、風邪をひきやすい、アレルギーの悪化

■ 3-4. 姿勢・筋力バランスへの影響

•頭が前に出た「ストレートネック」や猫背が進行
•顎・首・肩まわりの筋肉が硬直し、頭痛や肩こりの原因に
•顔貌の左右差や骨格成長のアンバランスが生じる可能性

第4章:口唇閉鎖不全症の診断と評価

■ 4-1. 歯科医院での診断方法

歯科医院では、以下のような評価が行われます。
•口唇閉鎖力の測定(リップル・オロスタット)
•口唇閉鎖時の表情・筋緊張の観察
•咬合診査(不正咬合の有無)
•鼻呼吸機能の確認(鼻腔通気性テスト)
•舌の位置や動きの観察(舌小帯の短縮も確認)

■ 4-2. 保護者からの聞き取りも重要

•就寝中の口の開き具合、いびき、歯ぎしりの有無
•食事中の様子(こぼす、時間がかかる、片側で噛むなど)
•発音や滑舌についての指摘歴
•日常生活の姿勢、集中力、呼吸様式など

第5章:口唇閉鎖不全症の治療と対応法

治療は、原因や重症度に応じて多面的に行います。

■ 5-1. 口腔筋機能療法(MFT)

口の周りの筋肉(口輪筋、頬筋、舌筋など)を鍛えるリハビリ療法です。
主な訓練内容:
•風船ふくらまし、ストロー吸引
•舌の上下・左右運動
•リップトレーナー(専用器具)によるトレーニング
•「あいうべ体操」やガムトレーニング

■ 5-2. 生活習慣・姿勢の見直し

•食事の姿勢や噛む回数を増やす工夫
•スマホ・ゲームの時間制限
•口を閉じる習慣づけ(「おくちチャック」など)

■ 5-3. 鼻呼吸の確立と耳鼻科との連携

鼻炎・アデノイド肥大・鼻中隔弯曲など、鼻の構造的問題がある場合は、耳鼻科医と連携して治療を行います。

■ 5-4. 矯正治療・咬合改善

歯列不正や顎の劣成長がある場合は、早期矯正(プレオルソ・マイオブレースなど)を併用することで、より良い結果が得られます。

第6章:予防と家庭でできるサポート

■ 家庭でできること一覧
実践項目 目的
姿勢よく食事をする 顎・舌の正しい使い方を促す
1口30回噛む 咀嚼力と顎の成長促進
「おくちチャック」ルール 唇を閉じる意識づけ
鼻呼吸トレーニング アレルギー対策と口呼吸防止
就寝前の唇ストレッチ 緊張緩和と習慣化
口の体操(あいうべ体操) 表情筋・口唇筋の活性化

第7章:放置してはいけない理由と社会的意義

口唇閉鎖不全症は、成長とともに自然に治ると誤解されがちです。しかし、早期に対応しなければ、発育・学習・コミュニケーション能力にまで悪影響が及ぶ可能性があります。
特に小児期は、「お口の機能」が「脳の発達」「社会性の形成」にも関係しており、子どもの将来の生活の質(QOL)を大きく左右する重要な分野です。

まとめ:お口の“ふた”が閉まることで、未来がひらく

口唇閉鎖不全症(ポカン口)は、単なる見た目の問題ではなく、**全身の健康や発育に直結する“警告サイン”**です。
早期発見・早期対応ができれば、多くの場合改善が可能です。
まずは「口が開いていること」に気づき、家庭・学校・医療機関が一体となって支援していくことが、子どもたちの健やかな未来につながります。
歯科医院では、機能面・習慣面・矯正面から、総合的に対応できます。
「もしかして…」と気になったら、どうぞお気軽にご相談ください。

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小児口腔機能発達不全症とは ― お口の発達と子どもの健やかな成長の関係

現代の子どもたちに増えているとされる「小児口腔機能発達不全症(しょうにこうくうきのうはったつふぜんしょう)」。これは、歯並びや噛み合わせの問題に限らず、「うまく噛めない」「飲み込みがうまくできない」「口がぽかんと開いている」「発音が不明瞭」など、食べる・話す・呼吸するといった日常の基本的な口腔機能の発達が十分でない状態を指します。
一見、些細なクセや性格のように見えるこれらの症状も、放っておくと全身の発育や社会生活に影響を及ぼす可能性があります。このコラムでは、小児口腔機能発達不全症の定義、症状、原因、診断、そして歯科医院を中心とした具体的な対応方法について詳しく解説します。

1. 小児口腔機能発達不全症とは?

小児口腔機能発達不全症は、2018年に日本歯科医学会によって保険病名として新設された比較的新しい概念です。口腔機能のうち「咀嚼(そしゃく)」「嚥下(えんげ)」「発音」「呼吸」など、複数の働きが年齢相応に発達していない、あるいは機能低下している状態が、複合的に認められることが診断の前提となります。

■ 主な症状(1つでも複数でも該当あり)

•食事中にこぼす、噛むのが遅い・噛まずに飲み込む
•飲み込みがぎこちない、よくむせる
•舌や唇の動きが鈍い
•発音がはっきりしない
•いつも口が開いている(口呼吸)
•指しゃぶり、舌癖(舌を前に出す)、唇を噛む癖が続いている
•歯並びや顎の発育の遅れがある
これらの症状は一見軽度に見えても、口腔機能の連携(運動・感覚・意識)の不調和を示していることが多く、発育とともに悪化するリスクもあるため、早期の気づきと対応が求められます。

2. 小児口腔機能が発達しない背景

■ 現代の子どもたちに増えている原因

小児口腔機能発達不全症が近年増加傾向にある背景には、以下のような社会的・環境的な要因があります。
① 食生活の変化
柔らかく加工された食事(ファストフード・レトルト・冷凍食品など)の摂取が増えたことで、咀嚼回数が減り、顎の発育が十分になされない子どもが増えています。
② 生活習慣の乱れ・運動不足
外遊びやスポーツの機会が減ったことにより、全身の筋肉と連動する顎・口腔周囲の筋肉の発達も未熟になりがちです。
③ スマホ・ゲームの長時間使用
下を向いた姿勢や口を閉じずに過ごす時間が長くなり、口呼吸や口腔機能の低下を引き起こすリスクがあります。
④ 母乳・離乳食の影響
母乳を早期にやめたり、離乳食のステップが十分でなかった場合、口唇・舌・頬の協調運動がうまく育たず、嚥下・咀嚼・構音の発達が遅れることがあります。

3. どのように診断するのか?

■ 歯科医院での評価方法

歯科医院では、以下のような観点から総合的に判断します。
1. 問診・保護者からのヒアリング
食事の様子、哺乳や離乳食の時期、言葉の発達状況、クセ(指しゃぶり・舌癖など)などを詳細に確認します。
2. 口腔内および顔面の観察
顎の大きさ、歯列の状態、舌・唇・頬の動き、表情筋の使い方などを観察します。
3. 専門的検査
•嚥下評価:飲み込みの様子をチェック(必要に応じて医科連携)
•発音・構音評価:舌の動き・発音明瞭度
•筋機能評価:口輪筋・舌筋・咬筋のバランスと発育状況

■ 診断基準の一例(複数該当で診断)

•食べ物をよくこぼす、時間がかかる
•飲み込むときにあごや口の動きが不自然
•舌を突き出す、指しゃぶりが残る
•発音が不明瞭で言い直されることが多い
•常に口を開けている
•鼻呼吸ができず、睡眠時にいびきがある

4. 歯科医院でできる対応と治療

■ 小児口腔機能発達不全症の基本方針

この疾患の治療は、主に「口腔機能の再教育」「筋機能訓練」「生活習慣の改善」などを組み合わせて行われます。歯列矯正や装置療法だけでなく、子どもの発育と習慣に合わせた“行動療法”が中心となります。

■ 主な対応内容

① MFT(口腔筋機能療法)
舌、唇、頬の筋肉を強化し、正しい動きを覚えさせる訓練です。専用の器具やエクササイズを通じて楽しく行えます。
② 食べ方・飲み込み方の指導
食事中の姿勢、噛む回数、飲み込む順序を確認・練習し、嚥下機能を自然に高めます。
③ 呼吸法の指導(鼻呼吸トレーニング)
口呼吸をしている子どもには、鼻呼吸を促す運動やトレーニングを通じて、呼吸様式の改善を図ります。
④ 悪習癖の除去(指しゃぶり・舌癖など)
行動療法や装置を用いて、悪習癖を無理なくやめられるように支援します。
⑤ 必要に応じて矯正治療や連携医療(耳鼻科・小児科など)
歯列不正や鼻閉など他科的要因がある場合には、専門医との連携を取りながら治療を進めます。

5. 年齢ごとの注意ポイントと対応

年齢 特徴 注意すべき点 対応例
1〜2歳 離乳完了期 哺乳・離乳の完了段階 飲み込みの確認、スプーンの使い方の指導
3〜5歳 咀嚼・発音の形成期 口呼吸、舌癖、発音不明瞭 MFT初期訓練、遊び感覚のトレーニング
6〜8歳 学童期前半 永久歯への交換開始 嚥下再学習、鼻呼吸への移行、早期矯正相談
9〜12歳 顎骨成長ピーク期 顎の発達不調、構音不良の定着 本格的筋機能療法、発音トレーニング

6. 保護者ができる家庭でのサポート

家庭でもできるサポートはたくさんあります。
•食事中はテレビやスマホを切り、姿勢よく食べる習慣づけ
•柔らかすぎない食材(野菜スティックや干し芋など)を取り入れる
•口をしっかり閉じる意識づけ(「おくちチャック」など)
•毎日5分の表情筋エクササイズ
•「あいうべ体操」などの口腔体操
•鼻呼吸を促す就寝時の対策(口テープなど)

7. よくある質問と答え

Q1. 子どものクセだけで“病気”なんですか?

A. 単なるクセと思われがちな口の動きや呼吸も、機能発達の遅れや障害のサインである場合があります。
放置することで発音障害や歯列不正、咀嚼・嚥下障害に進展することがあるため、早期の評価と対応が重要です。

Q2. 治療はどれくらい続ける必要がありますか?

A. 発育と習慣形成には時間がかかるため、3〜6か月、場合によっては1年以上かけて継続的に支援します。
保護者と歯科医療者の連携による二人三脚が成功の鍵です。

Q3. 矯正治療と何が違うのですか?

A. 矯正は“歯を動かす”治療、機能療法は“正しく動かせるようにする”治療です。
両方を併用することで、見た目と機能の両立が図れます。

8. まとめ ― 子どもの将来を守る「お口の教育」

小児口腔機能発達不全症は、見逃されがちですが決して珍しい疾患ではありません。現代の子どもたちにとって、「うまく噛める」「しっかり飲み込める」「はっきり話せる」ことは、健康的な身体・学習能力・社会性を育む土台です。
「ただのクセだろう」「大きくなれば治るだろう」と見過ごさず、お子さんの口元や話し方、食べ方に気になることがあれば、ぜひ歯科医院にご相談ください。私たちはお子さんの成長をお口の面からしっかりとサポートいたします。

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赤ちゃんから12歳までに気をつけたい歯の健康 ― 成長段階に応じたケアと注意点

子どもの歯の健康は、将来の口腔環境だけでなく、全身の健康や生活の質にも大きく影響します。乳歯が生え始める赤ちゃんの時期から、永久歯がそろい始める学童期まで、それぞれの段階に応じたケアや注意点を知っておくことがとても大切です。
このコラムでは、赤ちゃんから12歳くらいまでの子どもの歯の発達や、それぞれの時期に気をつけたいポイント、家庭でのケア方法について詳しく解説します。

【乳児期】生後6か月〜2歳ごろまで:乳歯のはじまり

■ 乳歯の萌出とケアのスタート
赤ちゃんの乳歯は、生後6か月ごろから下の前歯から順に生え始めます。2歳半〜3歳頃には、上下合わせて20本の乳歯がそろいます。この時期は歯が生え始めたばかりで、虫歯になりやすいイメージは少ないかもしれませんが、実は“予防のスタート地点”として非常に重要な時期です。
■ 注意すべきこと
•歯が生えたらすぐに歯磨き習慣を始めましょう。
最初はガーゼなどで拭き取るだけでもOKですが、徐々に乳児用歯ブラシに慣れさせましょう。
•哺乳瓶の使用には注意を。
長時間哺乳瓶でミルクやジュースを飲ませると、「哺乳瓶う蝕」と呼ばれる虫歯の原因になります。就寝中の飲み物は白湯や水がベストです。
•フッ素入り歯みがき剤は少量から。
年齢に応じて適切な量を使い、仕上げ磨きの後にうがいの練習も徐々に始めましょう。

【幼児期】3歳〜5歳ごろ:乳歯がそろい、虫歯リスクが高まる時期

■ 歯みがきの習慣づけと保護者のサポートが鍵
この時期はすべての乳歯が生えそろい、食事の内容も大人に近づいてきます。一方で、自分での歯みがきがまだ不十分なため、保護者の仕上げ磨きがとても重要になります。
■ 注意すべきこと
•仕上げ磨きは小学校入学前まで続けるのが理想。
歯ブラシが届きにくい奥歯や歯と歯の間は特に虫歯になりやすいため、大人の目と手でしっかりケアすることが必要です。
•定期的な歯科検診で虫歯予防を。
虫歯ができやすい時期のため、歯科医院での定期検診やフッ素塗布を受けることで、予防意識を高めることができます。
•間食の与え方にも工夫を。
甘いおやつやジュースをダラダラ摂取すると、虫歯のリスクが高まります。時間を決めて与えることがポイントです。

【学齢期前半】6歳〜8歳ごろ:乳歯と永久歯の“混合歯列期”

■ 生え替わりの時期、トラブルが起こりやすい
この時期は、乳歯が抜けて永久歯に生え替わり始める重要な時期です。特に「6歳臼歯」と呼ばれる奥歯は、乳歯の奥に新しく生えてくるため見落とされやすく、虫歯になりやすい歯のひとつです。
■ 注意すべきこと
•生えたばかりの永久歯は虫歯に弱い。
表面が未成熟で酸に弱く、歯ブラシも届きにくいため、フッ素塗布や歯科医院でのシーラント(奥歯の溝を埋める処置)などが有効です。
•歯並びのチェックも重要に。
乳歯の早期脱落や、指しゃぶり、口呼吸などが原因で歯並びや咬み合わせに悪影響を及ぼすことがあります。必要に応じて矯正歯科での相談も検討しましょう。
•自分で磨けるようサポートを。
6歳ごろからは自立心も育ちますが、まだ磨き残しも多いため、引き続き保護者のチェックや仕上げ磨きが大切です。

【学齢期後半】9歳〜12歳ごろ:永久歯列への移行と自立の時期

■ 歯並びやかみ合わせが完成に近づく
この時期には多くの永久歯が生えそろい、乳歯との交代がほぼ完了します。口腔内は大人に近づいていきますが、成長期ならではの歯列の変化や清掃不良が原因で、トラブルが起きることも少なくありません。
■ 注意すべきこと
•永久歯の虫歯や歯肉炎に注意。
特に奥歯は生えた直後に虫歯になりやすく、歯ぐきの炎症(小児性歯肉炎)も起こりやすいため、歯磨きの精度を高める必要があります。
•矯正のタイミングを見極める。
もし歯並びやかみ合わせに問題がある場合は、この時期に矯正治療を始めることで、歯を抜かずに対応できることもあります。
•生活習慣の見直しも重要。
間食の回数や食事の姿勢、噛む回数なども、歯や顎の発育に関係します。親子でバランスの良い生活習慣を心がけましょう。

年齢にかかわらず大切なこと

● フッ素で歯を強くする
歯科医院での定期的なフッ素塗布に加え、フッ素配合の歯みがき剤を日常的に使用することで、虫歯に強い歯を育てることができます。年齢に応じた濃度・使用量については歯科医に相談すると安心です。
● 歯医者を“こわくない場所”に
子どものうちから定期的に通院していれば、いざ虫歯になったときも恐怖感なく治療を受けることができます。定期検診は「歯を削る場所」ではなく、「歯を守る場所」として慣れさせることが大切です。
● スマイルキッズプログラムでの継続的なサポート
当院では、お子さまの成長に合わせた予防・管理を行うために、「スマイルキッズプログラム」を導入しています。定期検診のたびに、年齢や発育段階に応じて以下のようなサポートを行います:
•歯並びや顎の発達状況のチェック
•仕上げ磨きやセルフケア指導
•食生活や習癖に関するアドバイス
•歯科への慣れと継続的な通院習慣の育成
このように、単に虫歯を「見つける」だけでなく、**「育てる予防」**を意識した包括的なサポートを実施しており、将来的なトラブルの未然防止につなげています。詳しくは当院ホームページ(スマイルキッズプログラムの詳細はこちら)をご覧ください。
● 矯正の専門医(女医)による安心の相談体制
お子さまの歯並びや噛み合わせについて不安を感じた場合もご安心ください。当院には矯正治療を専門とする女性歯科医師が在籍しており、保護者の目線に寄り添った丁寧な診療を行っています。
歯並びのチェックだけでなく、「矯正はいつ始めたらいいの?」「抜歯は必要?」「費用はどのくらい?」といったよくあるお悩みにも、専門的な視点からやさしくご説明します。将来的な矯正治療を検討するうえでも、早期のご相談が重要です。ぜひお気軽にお尋ねください。

おわりに ― 歯の健康は“親子の二人三脚”で守る

子どもの歯の健康は、単に虫歯を防ぐだけでなく、咀嚼力・発音・顔の成長・全身の栄養状態などにも深く関係します。そのため、毎日の歯みがきや食生活の管理、定期的な歯科受診は、将来の健康への大きな投資といえるでしょう。
子ども一人ではまだ十分なケアができないからこそ、保護者の関わりと見守りが何より大切です。そして、歯科医院もそのパートナーとして、子どもの成長段階に応じたアドバイスとサポートを行っています。
乳歯の1本目が生えたときから、永久歯がそろう12歳ごろまで。それぞれのタイミングで、適切なケアと習慣づけをしていくことが、健やかな未来の笑顔につながっていくのです。

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「歯根破折」で抜歯は避けたい!歯の寿命を延ばす「ファイバーコア」という選択

歯の寿命を左右する「歯根破折」と「ファイバーコア」の重要性

歯は人体で最も硬い組織の一つですが、残念ながら永久に持つものではありません。特に、神経を抜いた(根管治療を行った)歯は、もろくなりやすく、さまざまなリスクを抱えることになります。その中でも、歯の寿命を大きく左右する深刻な問題が「歯根破折(しこんはせつ)」です。

歯根破折とは?なぜ神経を抜いた歯に起こりやすいのか

歯根破折とは、歯の根っこの部分にヒビが入ったり、完全に割れてしまったりする状態を指します。歯根破折が起こると、歯周組織との間に隙間が生じ、そこから細菌が侵入して炎症を引き起こします。自覚症状としては、噛むと痛い、歯茎が腫れる、膿が出る、歯がグラグラするといったものがありますが、初期の段階では自覚症状がないことも少なくありません。

神経を抜いた歯が歯根破折を起こしやすい理由はいくつかあります。まず、神経と共に血管も失われるため、歯への栄養供給が途絶え、歯自体が乾燥してもろくなります。例えるなら、生木が乾燥して枯れ木になるようなイメージです。また、根管治療の過程で歯の内部が削られることで、歯の構造が弱くなることも一因です。さらに、歯に大きな力が加わった際、例えば食いしばりや歯ぎしり、硬いものを噛んだ時、あるいは被せ物(クラウン)の土台に金属の芯(メタルコア)を使用した場合などに、その力が歯の根に集中し、破折を引き起こすことがあります。

一度歯根破折が起こってしまうと、多くのケースでその歯を保存することが困難になります。なぜなら、割れた部分を完全に接着して封鎖することが極めて難しく、そこから感染が繰り返し起こるためです。そのため、残念ながら抜歯を余儀なくされる場合がほとんどです。

歯根破折のリスクを低減する「ファイバーコア」

このように、歯の寿命を脅かす歯根破折を防ぐために、現代の歯科医療では様々な工夫が凝らされています。その一つが、根管治療後の被せ物の土台として使用する「ファイバーコア」です。

従来、神経を抜いた歯の土台には、金属製のメタルコアが使用されることが一般的でした。メタルコアは強度が高く、被せ物をしっかりと支えるという利点がありました。しかし、金属は非常に硬いため、歯に強い力が加わった際に、歯よりも硬いメタルコアが「くさび」のように作用し、歯根に無理な力を集中させてしまうことが、歯根破折の一因となることが指摘されてきました。

一方、ファイバーコアは、ガラス繊維強化樹脂を主成分とした土台です。その最大の特長は、天然の歯に近いしなやかさ(弾性)を持っている点にあります。このしなやかさにより、噛む力が歯全体に均等に分散されやすくなり、歯根に集中する応力を緩和することができます。その結果、歯根破折のリスクを大幅に低減することが期待できます。

また、ファイバーコアは金属を使用しないため、金属アレルギーの心配がなく、歯茎が黒ずむ「ブラックマージン」といった審美的な問題も防ぐことができます。さらに、光透過性があるため、オールセラミックなどの透明感のある被せ物と組み合わせることで、より自然で美しい仕上がりを実現することも可能です。

歯の未来を守る選択

歯根破折は、一度起こってしまうと取り返しのつかない事態になることがほとんどです。
ご自身の歯をできるだけ長く健康に保つためにも、根管治療後の土台の選択は非常に重要です。ご不明な点やご不安なことがございましたら、どうぞお気軽にご相談ください。私たちは、皆様の大切な歯の未来を共に守るお手伝いをいたします。

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